(平成17年1月13日、自民党杉並総支部での都議候補者公募でのスピーチ)

私は3年半、防災NPOに所属し、全国で4000人の皆さんに防災講座を行ってまいりました。

その観点から、防災をテーマに、私の政治に対する思いをお話します。

まず、お尋ねをいたします。ご家庭や職場で、どんな「防災対策」を行っていらっしゃいますか?

と、防災講座の会場でお聞きしますと、水、カンパン、ラジオ、懐中電灯、避難場所の確認、こんな答えが返ってきます。しかし、今、申し上げた防災対策は、大地震からいのちを守ることには、実は全く意味がありません。なぜでしょうか。



阪神淡路大震災では、6500人の方が亡くなりました。このうち、神戸市内で亡くなった、4000人について調べた「兵庫県監察医 調査報告書」というデータがあります。この報告書のポイントは2つ、死亡時刻と死亡原因です。

まず、死亡時刻について。報告書によると、地震発生後の15分間で、死者の96%が亡くなっています。つまり、ほとんどすべてが即死だったのです。どんなに早く救援を行っても、助かるいのちはほんの僅かです。事後対策でなく、事前の備えこそがいのちを守る。このデータが示す第1の教訓です。

ではその死亡原因、死因は何か。圧死、窒息死、打撲などをあわせると、83%が、崩れた建物や家具の下敷きになったことが原因です。この他、火災による死亡も、建物や家具に挟まれ、その結果、逃げられなくなってのものですから、これもあわせると、96%が、建物倒壊による関連死だといえます。水やカンパンが足りなくて死亡した人はひとりもいません。大地震からいのちを守るためには、建物や家具の下敷きにならないこと。このデータが示す、第2の教訓です。

しかしながら、この10年間に行われてきた、防災対策は、たとえば、初動態勢の迅速な立ち上げであったり、お年寄りや障害者など、災害弱者と呼ばれる人たちへの対策であったり、あるいは仮設住宅の問題であったりと、事後対策の充実ばかりでした。

新潟県中越地震では、私自身も調査と応援に入りました。日本中から応援部隊が集まり、救援物資が溢れかえっていました。事後対策は十分に機能するようになりました。

では、大地震からいのちを守るための本質、事前対策はどうでしょうか。あなたご自身のお住まいは、10年前より、本当に、強くなっていますか。東京を襲う、震度6強の地震に耐えられるようになっていますか。

災害が起きると、「現場の声が大事だ」といって、多くの被災者の方を対象に、アンケートが実施されます。

実は、これこそが落とし穴です。

「避難所になった体育館」で生活している人に聞けば、「あったかい食べ物を食べたい」とか、「お風呂に入りたい」とか、「プライバシーがないから仮設住宅に入りたい」との答えが帰ってきます。まったくもっともな答えです。ですが、そこからは本当に話を聞くべき、一番大切な人が抜け落ちています。 それは、亡くなった方の声です。



阪神淡路で亡くなったご本人に、「あなたの大切な家族に、地震からいのちを守るための教訓を、ひとつ残してください」と、もし、聞くことが出来れば、全員が「建物が崩れないよう強くしろ。家具が倒れないようしっかり固定しろ」と言うに決まっています。カンパンの話など出てくるわけがありません。

しかし多くの政治家は、亡くなった方の声ではなく、今現在も票を持っている被災者の声にしか耳を傾けません。だからこそ、仮設住宅や見舞金の充実など、事後対策のみに政策の重点が移るのです。しかし、そこには、私の目指す政治の本質はありません。有権者の声を聞くことは大切ですが、政治家が為すべき、それより、もっと大切なことがあると、私は信じています。



防災NPOに所属して3年半、60人の市長さん・区長さんに直接お会いして、防災政策の提言も行って参りました。そこで私が感じたのは、行政と都民との意識のギャップです。

たとえば、東京都が作成した「被害想定マップ」があります。環7・環8沿道、中央線沿線、私たちの住む杉並区や中野区は、5段階評価で、危険度4?5。また平成16年12月に発表された、首都直下地震の被害想定によると、東京での死者は、最悪の場合、1万2000人。阪神淡路の倍であります。建物被害16万棟、火災被害61万棟。

行政の側は、都民に危険を知らせているつもりでおりますが、それを受け止める側の、都民の意識はどうでしょうか。我が家は、地震に強いのか、火災にはどうか。水害も土砂崩れもあります。一般論としてはわかっても、自分自身の家がどうなのか、それが知りたいのです。住民自身が本当に危険を認識すれば、防災は一気に進みます。

私はまず、甚大な被害が予測されているこの杉並をトップバッターに、都内のすべての建物を、赤・黄色・青の3段階で、危険度調査をして、その結果を、個別に住民自身にお知らせしたいと思います。もっとも危険だと判断された赤の人は、自分自身でなんとかするでしょうし、行政の側も、耐震工事の動機付けとして、たとえば建物の容積率をアップさせるプレミアムをつけたり、固定資産税の軽減をしてもいいでしょう。またリフォームを行う際には、耐震工事を義務付けてもいいし、通常、100万円かかる工事費の、一定部分を行政が助成するのもいいでしょう。アイデアはどんどん出していきます。東京がこの制度をスタートさせれば、必ず全国に広がります。

マグニチュード7クラスの、東京での発生確率は、今後30年間で70%。私は、都民のいのちをまもるために、地震が来る前の今、なんとしても、事前対策を行いたい。政治家が本質的な対策に、今、取り組むかどうかによって、都民のいのちが掛かっているのです。

個別の工事も大切ですが、政治がなすべき大きな役割は、防災まちづくりであります。課題は木造密集地域。地震で倒壊しやすく、火災の発生や延焼の恐れがあり、しかも道路が狭く、消防車が辿り着けない地域です。六本木ヒルズも、かつては木造密集地域でした。それを20年かけて再開発をし、500世帯のうち8割が、戻り入居をしています。木造密集地域を解消すれば、防災上、極めて有効であることはもちろん、地域にとっても、そのオープンスペースに、広場や公園を作ることが出来ます。レストランもお店も出来るでしょう。快適で安全なまちを、私たちの時代で作ろうではありませんか。

※写真は1995年阪神淡路大震災 神戸市中央区・長田区(撮影 弘光由和 http://1632.jp)



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