2009.12.11 :平成21年厚生委員会
「介護基盤整備」

早坂委員 

 介護基盤緊急整備等臨時特例基金条例について伺います。
 我が都議会自民党は、本年四月国が公表した経済危機対策において、介護職員の処遇改善とあわせて、介護拠点の整備が盛り込まれたことを高く評価しております。
 これを受け、東京など大都市部における基盤の整備を着実に進めるため、我が党は、東京都に対して、補助の充実を図ることを国に働きかけるよう要望しました。その結果、国は、大都市部などでは用地の取得が困難な状況であることから、介護拠点の整備促進を図るため、定期借地権の設定に伴い、事業者が地主に払う一時金に対する助成制度を創設しました。
 東京都は、こうした新たな補助制度や、今回設置する介護基盤整備のための基金を活用して、区市町村や事業者が積極的に整備に取り組むよう働きかけていく必要があると考えております。
 そこで、これまで東京都は区市町村に対してどのような働きかけを行ってきたのか、伺います。

〇狩野高齢社会対策部長 

 国の経済危機対策による補正予算では、都道府県に基金を造成し、区市町村が進める介護基盤の緊急整備等を行うための事業が創設されました。
 この中には、お話にもありましたように、都議会自由民主党からの要望を受け、都から国に要望した結果、新たに、大都市部での基盤整備を図るため定期借地権制度を利用した事業も盛り込まれております。都では、国の補正予算の成立を受け、全区市町村に対し個別にヒアリングを実施し、本基金事業を活用した介護基盤の整備を積極的に働きかけてきました。
 その結果、区市町村は介護基盤の緊急整備のほか、施設開設準備経費の助成などの基金事業を活用して、次期の介護保険事業計画である二十四年度以降の整備予定の前倒し分も含めまして、介護基盤の整備計画を策定しているところでございます。
 都では、区市町村との協議を踏まえ、例えば認知症高齢者グループホームでは六十三カ所、約一千人分、小規模多機能型居宅介護事業所五十三カ所分、認知症対応型デイサービスセンター三十五カ所分など、現行の計画数に上乗せして整備することとしております。
 こうした経費を含め、本定例会の補正予算では、介護基盤緊急整備等臨時特例基金として、約二百五十億円を積み立てることとしたものでございます。

早坂委員 

 本基金については、対象施設が認知症高齢者グループホームなど、定員二十九人以下の施設に限定され、ショートステイを初め広域型サービスは対象となっていません。
 積み立てる二百五十億円の基金が有効に活用され、地方自治体の裁量で本事業が円滑に執行されるよう、東京都はさまざまな制約の緩和を国に働きかけるべきと考えます。ご見解を伺います。

〇狩野高齢社会対策部長 

 今回の国の基金事業には、先ほどもお答えしましたとおり、定期借地権制度を活用した基盤整備など、これまでの補助制度にはないものであり、大都市部での基盤整備を進める上で大変有効なものであるというふうに認識をしております。
 しかし、その一方で、区市町村や事業者の立場から見ますと、例えば交付金の対象施設が限定されているなど、活用しにくいという意見もございます。
 具体的には、定期借地権を活用した基盤整備につきましては、定期借地権の期間設定が原則五十年以上であること。助成対象が路線価の二分の一を上限に、その半分を補助することから、実際の補助額は路線価の四分の一にしかならないこと。また、土地が大変希少で確保が困難な都心部では、土地所有者の方がみずから施設整備を行い民間の運営事業者に施設を貸し付けるという手法、いわゆるオーナー型の整備が大変有効でございますけれども、今回の国の基金事業の補助対象にはなっていないことなど、さまざまな課題がございます。
 こうした課題につきましては、国に要望しているところでございますが、今後さらに区市町村や事業者の意見も聞きながら、改めて国に対し、本基金事業に関する要件緩和などについて提案要求をしてまいります。

早坂委員 

 介護基盤の整備については、六十五歳以上の高齢者数に占める介護施設、高齢者住宅などの定員数の割合を比較すると、我が国は、欧米に比べて少ないといわれています。
 しかし、国の社会保障国民会議の資料をよく見ると、施設については、我が国が三・五%であるのに対し、スウェーデン四・二%、デンマーク二・五%、イギリス三・七%と、我が国は、欧米と比較して決して少ないわけではありません。他の国と比較して差があるのは、いわゆるケアつき高齢者住宅の整備率が我が国は際立って低く、ここに大きな差が生じています。
 また、東京都の高齢者人口当たりの介護保険施設の整備率は、全国最低であるとしばしば新聞などで指摘されていますが、ここでいう介護保険施設には、例えばこうしたケアつきの高齢者住宅や、介護つき有料老人ホームなどの居住系サービスは含まれていません。国別や都道府県別に整備率を比較するなら、介護保険施設と居住系サービスを合わせた定員数で比較することが、実態を明らかにする上で適当であります。
 そこで、こうした観点から、介護保険施設に介護つき有料老人ホームなどを加えた場合の、全国と比較した東京都の整備率についてお伺いをいたします。

〇狩野高齢社会対策部長 

 国の平成十九年の介護サービス施設・事業所調査によれば、東京都における介護保険三施設の整備率は、高齢者人口十万人当たり二千二百十九人、率でいいますと二・二%となります。
 しかし、介護保険施設と同様の機能を持つ特定施設入居者生活介護の指定を受けた介護つきの有料老人ホームは、本年十一月現在、都内に、特別養護老人ホームの施設数三百九十四カ所を超える四百二施設、定員二万六千百十一人の規模となっており、対高齢者人口比で申しますと、一%の整備率となっております。
 このため、介護保険三施設と介護つき有料老人ホームを合算しますと、高齢者人口に対する整備率は三・三%となります。介護保険三施設の全国平均の整備率が三・〇%でございますので、この特定施設を加えれば、東京都も、介護保険施設等の整備率は他県と比べて必ずしも低いとはいえないというふうに認識をしております。
 なお、都では、有料老人ホームを介護サービス基盤の一翼を担うものと認識し、有料老人ホームのうち介護専用型については、平成十九年度から独自の補助制度を設けているところでございます。

早坂委員 

 東京には所得の高い人たちも多く、こうした人たちは何も特別養護老人ホームなどの公的施設でなく、同様のサービスが確保、提供されるのであれば、みずからの意思で民間の有料老人ホームなどに入居することも多いと思います。
 東京都においては、昨日、医療と介護を連携させた高齢者専用賃貸住宅のモデル事業を行う事業者を決定しました。高齢者が安心して住み続けられる新たな住まいとして期待されます。また、こうした高齢者向けの賃貸住宅における適切なサービス提供の確保に向け、東京都は独自の指針を策定し、指針を遵守した住宅について広く都民にPRすることとしており、ケアつき住宅を高齢期の住まいとして選択する人への新たな取り組みとして、評価をしております。
 我が党は、ケアつき住宅である介護つき有料老人ホームについて、要介護高齢者の受け皿として有望であるとこれまで主張してまいりましたが、今後とも、介護保険施設の整備とあわせ、介護つき有料老人ホームやケアつきの住宅の整備に積極的に取り組むよう、要望いたします。
 次に、介護基盤の整備について考えるとき、要介護高齢者の意向はもちろんのこと、住まいや所得の状況、さらに単身世帯の増加による家族介護力の一層の低下など、高齢者を取り巻く環境を総合的に勘案して、施設サービス、居住系サービス、在宅サービスのバランスを考慮しながら、地域の実情に応じた計画的な整備が必要です。
 本来、介護保険制度の基本的な考え方については、介護保険法の条文でも、在宅重視の理念が明確に掲げられています。しかし、独居や夫婦のみ世帯の増加により介護ニーズが増加する中で、現在の居住系サービスでは十分に介護ニーズにこたえられないとの指摘があります。例えば、先ほども述べたとおり、今回の基盤整備に関する基金事業において、ショートステイは対象となっていません。
 ショートステイについては、緊急時に柔軟に利用することができないため、介護者の急な用事や、レスパイト??介護者の息抜きなど、本来の役割を十分に果たしていないとの指摘もあります。
 在宅重視の理念を具体化していくためには、在宅サービスの機能強化が不可欠であります。とりわけ家族介護者の負担軽減を図る上で、ショートステイの大幅な拡充が必要と考えます。ご見解を伺います。

〇狩野高齢社会対策部長 

 高齢化が進展し、医療や介護を必要とする在宅の高齢者の増加が見込まれる中、在宅高齢者やその家族にとって、ショートステイの役割はこれまで以上に重要なものになると認識をしております。
 このため、ショートステイの整備に当たり、都では現在、特別養護老人ホームとの併設の際に補助を行っておりますが、今後、補助の対象を拡大することを検討してまいります。

早坂委員 

 介護基盤の整備について考えるとき、いわゆる施設待機者の問題があります。
 平成十九年の東京都の調査によれば、東京都内の特養入所希望者数は、重複申し込みを除外して約三万八千人となっています。全国調査でも三十八万人といわれています。
 しかし、入所申込者のうち、その多くは在宅以外の施設入所者で占められており、要介護度の低い方も少なくありません。したがって、特養入所希望者三十八万人という数字は、必ずしも特養での介護サービスを必要とする高齢者の人数と一致するわけではありません。
 今後、より詳細なデータを収集し、分析する必要があると考えます。ご見解を伺います。

〇狩野高齢社会対策部長 

 お話のとおり、平成十九年に東京都が実施をしました調査においても、特養の入所希望者数は実数で三万八千三百二十一人の希望者がいるものの、約半数の一万九千六十五人が要介護度三までの方でございます。
 また、要介護度四、五の方、一万八千六百九十五人の中にも、在宅以外の介護保険施設や病院、社会福祉施設などにいる方もおり、必ずしも特別養護老人ホームに入所が必要な数を正確にあらわしているものとはいえない面がございます。
 現在、国におきまして特養の入所希望者の調査を実施しており、集計がまとまり次第公表するというふうに聞いております。
 都といたしましても、より適切なデータに基づき特別養護老人ホームの整備を進めるため、ご指摘を踏まえまして、入所希望者の実態把握の手法について検討してまいります。

早坂委員 

 三万八千人という数字だけがひとり歩きしていますが、その内訳を見れば、今ご答弁にありましたとおり、特養への入所対応が必要でない方が多いこともわかります。
 しかし、一方で、これだけの方が入所を希望しているということは、日々の暮らしの中で、何かしらの支援の必要性や不安を抱いている高齢者が数多くいるということでもあります。
 行政として必要なことは、在宅重視の施策を着実に進めながら、特別養護老人ホームを初めとする多様な介護サービス基盤を整備することです。その前提となるのが特養入所希望者の実態を正しく見きわめることであり、今後とも、適切な対応を希望します。
 次に、介護職員処遇改善交付金について伺います。
 介護人材不足は社会的に深刻な問題であり、中でも大都市東京においては、地域の賃金水準や物価を適切に反映していない現在の介護報酬水準では、人材を確保することが難しく、問題はより深刻であります。
 我が都議会自民党は、本年、先ほどの介護拠点の整備に関するものとあわせて、東京都に対し、介護職員の処遇改善交付金についても、全国一律でなく地域差を適正に反映した内容とすることを国に働きかけるよう要望いたしました。
 残念ながら、その点についてはいまだ実現していないものの、介護事業者に、介護職員の賃金改善のための資金を交付する介護職員処遇改善交付金事業を実施することになったのは、一定の成果であります。
 この交付金は、直接、介護職員の賃金に充てられるものであり、非常に効果が高いと考えています。
 そこでまず、この交付金を活用して、介護職員の賃金改善がどのような形で行われるのか、伺います。

〇狩野高齢社会対策部長 

 都が十一月十六日時点で、介護サービス事業者、千四百七十一事業者を対象に調査した結果によりますと、改善を予定しております給与項目は、基本給の改善が三九・二%、各種手当が五一・九%、一時金が六五%でございました。
 介護職員処遇改善交付金は、平成二十三年度までの時限的な措置であるため、継続的な賃金の改善に結びつかないのではないかという指摘もありましたが、調査結果によれば、基本給と一時金など複数の給与項目の改善を予定している事業者も多くございました。

早坂委員 

 基本給や手当などさまざまな形での賃金改善が行われる見込みとのことで、効果が期待されます。
 できるだけ多くの事業者に交付金を活用していただきたいと思いますが、国が発表した十月三十日現在のデータによれば、申請率は全国で七二%、東京都では、それをやや下回る六八%となっています。思ったほど申請が伸びていない理由について伺います。

〇狩野高齢社会対策部長 

 国が十一月に事業者を対象に行いましたアンケート結果によりますと、処遇改善交付金を申請しない理由として最も多かったのは、対象が介護職員に限られていること、次いで、事務作業が煩雑であること、三点目に、事業が終了する平成二十四年度以降の取り扱いが不明であることの順となっております。
 対象を介護職員に限定していることについては、国は、平成二十一年度の介護報酬改定によって介護職員の処遇改善を図ったところであるが、他の業種との賃金格差をさらに縮め、介護が確固とした雇用の場として成長していけるよう事業者に資金を交付し、さらなる介護職員の処遇改善を進めていくためとしております。
 一方で、関係団体からは、例えば、同じ職場で働く介護職員と看護職員の処遇に差がついてしまうなどの意見があることから、都は、今後とも、介護現場で働く職員の処遇が適切かつ安定的に確保できるような仕組みとするよう、国に働きかけていきます。
 また、平成二十四年度以降の取り扱いについて、国は、平成二十四年度以降も介護職員の処遇改善に取り組んでいく旨の方針を示しており、都としても、事業者に対しこの方針の周知に努めてまいります。

早坂委員 

 実際の介護現場からのさまざまな指摘、要求を受けとめ、今後この交付金の効果を検証し、改善すべき点があれば国に要求していくことを要望します。
 また、東京都としては、一つでも多くの事業者が申請を行い、介護職員の処遇改善に取り組めるよう、積極的に働きかけるべきと考えます。ご見解を伺います。

〇狩野高齢社会対策部長 

 都においては、これまで介護サービス事業者に対する説明会を四回開催し、千三百七十事業者の参加を得るとともに、文書やホームページによる情報提供、事業者からの相談を受けるための専用電話の開設等、本制度の周知に努めてまいりました。
 また、本交付金を活用し処遇改善を図るためには事業者の申請が前提となることから、未申請の事業者に対しては、改めて申請書類に記入例を添付して郵送するなど、申請を促進するための方策をきめ細かく講じているところでございます。
 今後とも、各事業者に対して、本制度の周知徹底に努めてまいります。

早坂委員 

 介護の仕事は、大きなやりがいがあるものの、反面、相当の重労働であり、これに見合った処遇が必要であります。この交付金の活用により、介護職員の処遇改善がさらに進むことを期待いたします。