2010.10.26 :平成22年厚生委員会
「感染症緊急対応病床」

早坂委員 

 昨年の冬、新型インフルエンザが大流行しました。世界保健機関、WHOがパンデミック、世界的流行を宣言し、地球規模で猛威を振るいました。東京においても例に漏れず、私たち多くの都民がこれに感染し、医療機関を受診したことは記憶に新しいところです。このときは、たまさか弱毒性のA型、H1N1の新型インフルエンザであったからよかったものの、今後想定されるH5N1型の強毒性新型インフルエンザが流行した場合には、我が国では全人口の二五%が罹患し、最大六十四万人の死者が発生するという国の試算があります。このような危機に直面した場合においても、患者に適切な医療を提供できるよう、都立病院、公社病院では当然に備えを進めておかなければなりません。
 さきの第三定例会での我が党代表質問に対し、都立病院ではハード面及びソフト面の両面から、多角的、重層的な感染症対策を進めているとの病院経営本部長の答弁がありました。まず、ソフト面では、今年度からすべての都立病院に感染管理看護長を配置し、院内感染対策の充実を図っていること。次に、ハード面では、駒込病院がことし五月に第一種感染症指定医療機関の指定を受けたこと。墨東病院、駒込病院、多摩総合医療センター、小児総合医療センターにおいて、感染症緊急対応病床を整備済みないし予定をしているとのご答弁でございました。
 そこで、東京都独自の取り組みである感染症緊急対応病床とはどのような機能を持つ病床なのか伺います。

〇黒田経営企画部長 

 感染症緊急対応病床とは、第一種、第二種感染症指定病床を補完するための病床としまして、都立病院及び公社病院に整備しているものでございます。病室またはフロア全体を陰圧管理できるように整備しておりまして、通常は一般病棟として使用いたしまして、必要時に陰圧管理に切りかえて使用するものでございます。
 例えば、新型インフルエンザの発生段階で、第一段階、海外発生期におきましては、感染の疑いのある患者さんが多数発生した場合、確定診断が出るまでの間、一時的な受け入れ病床として使用いたします。第二段階、国内発生期におきましては、感染拡大を阻止し国内の医療機関の診療機能の麻痺を予防するため、感染症指定病床を補完する入院病床として機能いたします。第三段階、蔓延期におきましては、人工呼吸器を装着する患者さん等、重症患者を診療するための入院病床として機能するものでございます。

早坂委員 

 第一種、第二種感染症指定病床はエボラ出血熱やSARSなど、極めて深刻な感染症を対象としており、感染症緊急対応病床は、これらを補完するための東京都独自のものであります。
 では、現在整備中もしくは整備予定を含め、都立病院、公社病院全体でこの感染症緊急対応病床を何床整備するのか伺います。

〇黒田経営企画部長 

 感染症緊急対応病床は、現在、がん・感染症センター、駒込病院に六十四床、多摩総合医療センターに百五十九床及び小児総合医療センターに二十八床を整備いたしました。また、今年度は公社荏原病院及び豊島病院にそれぞれ六十床ずつ整備しているところでございます。さらに、二十五年度までに墨東病院に三十床整備することを予定しております。整備終了後は、都立病院、公社病院全体で感染症緊急対応病床を四百一床整備することとなりまして、お話がございましたとおり、感染症法の規定に基づく都内百三十床の感染症指定病床を補完する役割を担ってまいります。

早坂委員 

 これまでの我が党の要望が着実に推進されていることを確認し、大変頼もしく思います。
 ところで、昨年の新型インフルエンザの流行は、我が国では実に二十九週間に及びました。国民の六人に一人が医療機関を受診し、受診者の十万人に一人、およそ二百人が死亡したと厚生労働省が推計しています。冒頭申し上げたとおり、昨年はたまさか弱毒性でしたが、今後、強毒性の新型インフルエンザが流行する危険性が指摘されています。その場合、医療機関の医師やスタッフも当然ある一定数、罹患することとなり、医療資源が減少します。一方で、そのような場面では、患者数が激増するというジレンマを抱えています。BCP、事業継続計画を策定する上で、一般には少ない人数で日常の業務を、どこをカットするかを考えることになりますが、病院ではスタッフは減るが仕事はふえるという特別のBCPが求められます。
 そこで、病院経営本部は今後どのような対策を進めていくのか伺います。

〇黒田経営企画部長 

 新型インフルエンザの流行規模や被害規模は出現したウイルスの病原性や感染力に左右されるものでございまして、現時点で今後の流行規模等を予想することは困難ではございますが、新たな流行の波が発生する可能性があるとの認識に立ちまして、対策を継続する必要があるというふうに考えております。このため、今年度は、駒込病院が第一種感染症指定医療機関に指定されたことや、感染症緊急対応病床の役割などを盛り込んだ形で、都立病院新型インフルエンザ対応マニュアルを改訂いたします。
 また、二次感染拡大防止マニュアル作成のためのガイドライン、平成二十二年度版を作成いたしまして、病院におけます二次感染対策を強化していくこととしております。また、都政のBCP新型インフルエンザ編に基づきまして、病院経営本部BCP新型インフルエンザ編を改訂した後も、引き続きさまざまな事態を想定いたしまして、限られた人員で病院運営を行うための対応方針や実施方法等につきまして検討を進めてまいります。

早坂委員 

 新型インフルエンザ対策に代表される危機管理では、マニュアルどおりに状況が進むことはまれであり、実際の被害状況や進行状況などに応じ、柔軟に対応していかなければなりません。また、マニュアルやBCPは社会の動向や都民の期待を踏まえ、随時見直しをしていくことが必要です。東京都が新型インフルエンザ医療提供体制を充実する上で、都立の八病院、公社の六病院が果たす役割は極めて大きいと思います。今後とも積極的な取り組みをお願いいたします。