2010.03.17 :平成22年厚生委員会
「高齢者の摂食・嚥下機能」

早坂委員 

 次に、高齢者の摂食、嚥下機能支援について伺います。
 平成二十年の人口動態統計によれば、東京都の高齢者の死因は、がん、心疾患に次いで第三位が肺炎です。この肺炎をよく調べてみると、風邪を引いて肺炎になるのはごく少数で、誤嚥性肺炎がおよそ七〇%だというデータがあります。
 この耳なれない誤嚥性肺炎とは、本来口を通って食道に入るべきものが、飲み込むこと、すなわち嚥下機能の低下が原因で誤って気道に入ってしまい、それが肺炎を引き起こすというものです。それゆえに誤嚥性肺炎は老人性肺炎ともいわれています。食事をしてむせるのは、まさにこの誤嚥によるものでありますが、夜寝ている間に、もともと口の中にある細菌が唾液や胃液とともに知らぬ間に気道に入るのが高齢者に特有の症状です。このむせない誤嚥を不顕性誤嚥といいます。高齢者特有のこの不顕性誤嚥を防ぐことが、高齢者の死因の第三位である肺炎を防ぐことになります。不顕性誤嚥を防ぐには口腔ケアが有効であるとされています。すなわち、口の中の環境をよくすることで細菌が減り、たとえ知らないうちに誤嚥されても、雑菌を含んでいないため、肺炎になりにくいわけです。
 一方で、高齢者の死因の第六位が不慮の事故です。その中で転倒、転落に次いで二番目に多いのが不慮の窒息であり、これは交通事故による死亡を大きく上回っています。高齢者に窒息が多いのは、先ほどの不顕性肺炎と同じく、摂食、嚥下機能の低下にあります。
 このように、生命に直結する摂食、嚥下機能の低下は、特に要介護高齢者に多く認められ、対応が必要だと考えます。そして、何よりも、口から食べることは人生の大きな楽しみであり、クオリティー・オブ・ライフに大きく影響します。
 そこで、要介護高齢者の摂食、嚥下機能強化に対する東京都の取り組みについて伺います。

〇中川原参事 

要介護高齢者の誤嚥性肺炎や低栄養を予防し、生活の質の向上を図るためには、摂食、嚥下機能を適切に評価し、リハビリ指導を行うことが重要でございます。医師、歯科医師による評価や指導、理学療法士によります訓練等、多職種が連携した取り組みが有効でございます。
 このため、都では、平成二十年度から摂食、嚥下機能強化を支援するモデル事業と、それを担う人材育成事業を実施しておりまして、多摩立川保健所によりますモデル事業では、地域の要介護高齢者を対象に多職種が連携して支援を行い、患者の状態が改善するなどの効果が確認されております。
 また、都立心身障害者口腔保健センターによる人材育成事業では、摂食、嚥下機能障害に習熟いたしました医師、歯科医師の育成を目的に、講演と実習を中心とした専門研修を開始いたしました。
 こうした成果を踏まえまして、平成二十二年度は、地域の口腔保健センター等を中心に特別養護老人ホームや在宅等で行う実地研修で、医師、歯科医師やコメディカルスタッフを対象といたしました人材育成を図る摂食、嚥下機能支援推進事業を実施してまいります。

早坂委員 

 この新規事業に対する平成二十二年度の予算案は、わずか五百六十七万円であります。有効な事業成果を示すことによって、いうなれば小さく産んで大きく育てるように期待をいたします。