2016.10.05 :平成28年第3回定例会(第13号)本文
「都立美術館・博物館の写真撮影解禁」

 さて、この写真をごらんください。フェルメール作、真珠の耳飾りの少女です。平成二十四年にリニューアルオープンした東京都美術館で、この絵が目玉作品として公開されました。それがこの年の何と世界最多観客動員数を記録したという、東京都の文化行政の歴史においても特筆すべき作品でございます。
 残念ながら私は、東京都美術館にこの作品を見に行くことはありませんでした。都庁生活文化局の方から先ほどの世界記録達成のお話を伺いましたので、昨年、オランダを訪問した際、マウリッツハイス美術館で、これがその作品かと実物をしっかり鑑賞してまいりました。
 この写真は、そのとき私が撮影したものです。このマウリッツハイスに限らず、フランスのルーブル美術館、イタリアのバチカン美術館、アメリカのニューヨーク近代美術館やメトロポリタン美術館など、名立たる美術館の常設展では写真撮影が許可されています。
 一方で、東京都美術館での写真撮影は、基本的に禁止されております。時代は変わり、誰もがスマートフォンやカメラつき携帯電話を持つようになりました。ユーチューブやフェイスブックに投稿し、そのときの感動をみんなで分かち合うのは本当に楽しいものです。美術館での写真撮影解禁は世界的潮流であります。
 フランスのオルセー美術館では、昨年から写真撮影が解禁となりました。そのきっかけとなったのは、フランスの文化大臣が、自分がオルセー美術館で撮った写真をツイッターとインスタグラムにアップしたことです。これが、一般客には禁じられているのに、どうして大臣はいいのか、特権濫用だと大問題となりました。折しも写真撮影解禁の是非を議論していたオルセー美術館は、解禁に踏み出さざるを得なくなったのです。
 解禁には、著作権の問題、作品の保護、会場内の混乱などの懸念があるようです。しかし、世界中の美術館でできて東京都の美術館でできないはずがありません。
 繰り返しになりますが、時代は変わり、芸術文化に対する人々の楽しみ方も大きく変わりました。また、作家の皆さんにとっても、多くの人々がみずからの作品についてSNSなどで取り上げてくれるのは喜ばしいと感じる方が大多数になったのではないでしょうか。
 そこで、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックのレガシーとして、ぜひ都立美術館、博物館の写真撮影解禁を提案したいと思います。
 原則禁止という現在のブラックボックス状態から、原則解禁、事情ある作品のみ一部禁止という方向へ大きくかじを切っていただきたいと存じます。
 東京が変われば、きっと日本全体が変わります。オリンピック・パラリンピックをきっかけに日本中の美術館が変わる、それこそが真のレガシーです。ご見解を伺います。
   〔生活文化局長中嶋正宏君登壇〕
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◯生活文化局長(中嶋正宏君) 都立美術館、博物館での写真撮影についてでございますが、海外の主要な美術館では、その館が所有する有名な作品を撮影することが可能であり、このことが来館者にとっての魅力の一つとなっております。
 一方、都では、こうした有名な作品は借用して展示する場合が多く、作品管理などの観点から撮影を制限することが一般的でございます。
 しかし、ご指摘のように、二〇二〇年に向けまして、美術館、博物館を一層魅力あるものとするためには、写真撮影が楽しめるなど、より都民に開かれた施設としていくことが重要でございます。
 そこで、その一環として、今年度は、東京都美術館のポンピドーセンター傑作展におきまして、一部撮影を可能といたしました。
 今後は、フラッシュ使用による作品への影響を初めさまざまな課題にも配慮しながら、作品所有者への働きかけを行うなど、都立美術館、博物館での撮影機会の拡充に向けまして積極的に取り組んでまいります。