2007.11.15 : 平成19年文教委員会 本文
「指導力不足教員と期限付任用教員」

早坂委員

 指導力不足教員と期限つき任用教員についてお伺いをいたします。
 まず、一般に、地方公務員の採用試験は人事委員会が行いますが、公立学校の教員の採用は教育委員会が行っています。その理由も含めて、教員の採用方法及び受験資格についてお伺いいたします。

〇松田人事部長

 教育公務員特例法第十一条は、教員の採用は選考によるものとし、その選考は、教員の任命権者である教育委員会の教育長が行うと規定をしております。都におきましても、教員の採用選考は教員免許状を既に取得している者または任用までに取得見込みのある者の中からその資質や適性、専門性を見きわめ、よりふさわしい人材を確保することが重要でありまして、教員の任命権を持つ教育委員会の教育長が行っております。都教育委員会におきましては、筆記試験や面接等により能力実証をし、教員としての熱意や使命感並びに実践的な指導力を重視した選考を行っております。
 なお、受験資格といたしましては、先ほど申し上げた免許要件のほか、一般選考四十歳未満、教職経験者、社会人経験者等を対象とした特例選考は四十五歳未満としております。

早坂委員

 地方公務員として採用されても、条件つき採用期間、いわゆる試用期間が一般の地方公務員より教員の方が長いようであります。このあたりの事情について伺います。

〇松田人事部長

 地方公務員法第二十二条第一項によりまして、一般職の地方公務員には六カ月間の条件つき採用期間が設けられております。教諭等につきましては、新任教員に対しまして実践的指導力と使命感を深めるとともに、幅広い知見を得させることを目的といたしまして、採用後一年間の初任者研修制度が設けられております。この初任者研修制度の実施に伴いまして、教育公務員特例法によりまして教諭等の条件つき採用期間を一年間とする特例が定められております。

早坂委員

 ただいまの二つのご答弁を私なりに解釈すると、教職免許という高度な資格を持った人であるから一般公務員とは別の採用方法で採り、また、より高度な水準に達するべく長い試用期間が定められている、それゆえに一般公務員より給料は高い、こんなことだろうと思います。
 今日、教員の人件費は、義務教育費国庫負担制度により国が三分の一、都道府県が三分の二の割合で負担しています。しかし、教員は区市町村立の学校に所属しておりますから、採用教員の給料の支払いは、都道府県でなく区市町村が行うべきものと考えます。ご見解を伺います。

〇松田人事部長

 現行制度におきましては、区市町村立小中学校の教職員の給与は義務的経費であり、かつ多額であるため、区市町村より財政力が安定している都道府県の負担とされ、あわせて広く区市町村を超えて人事を行うことにより教職員の適正配置と人事の交流を図るため、その任命権は都道府県が有することとされております。
 しかし、東京都教育委員会といたしましては、本来、区市町村立小中学校の教育につきましてはその実施主体である区市町村が責任を負うべきであり、教職員の人事権の行使と給与の負担についても区市町村が行うべきと考えております。

早坂委員

 新たに採用された教員はどのような研修を受けるのでしょうか。あわせて、中堅、ベテラン教員の研修制度についてもお伺いいたします。

〇岩佐指導部長

 新規に採用されました教員は、一年間にわたりまして教職員研修センターにおいて教員としての使命感や授業力向上等に関する研修を受講するとともに、勤務校において授業研究等を中心とした年間三百時間以上の実践的な研修を受講いたします。初任者研修を修了した後、都立学校におきましては授業力の向上を図る二、三年次授業研究、四年次授業観察を受講いたしまして、小中学校につきましても、ほとんどの区市町村で同様の研修を受講するようになっているところでございます。さらに、在職期間が十年に達した後に十年経験者研修を受講いたします。
 都教育委員会は、これらの必修研修のほかに、校長、副校長、主幹などの職層に応じた研修や、教科や教育課題等についての研修などを実施し、教員のライフステージに応じた資質向上を図っております。

早坂委員

 教員の日常の勤務評定とそれに対する処遇への反映はどのようになっているか伺います。

〇松田人事部長

 教育職員の資質能力の向上と学校組織の活性化を図ることを目的といたしまして、平成十二年度から自己申告と業績評価の二つの柱で構成する人事考課制度を導入しております。このうち、業績評価は校長が授業観察などにより教員の職務遂行状況について把握をし、評価を実施するものでございまして、その結果を処遇へ反映させることで能力と業績に基づいた人事管理を推進しております。
 具体的には、勤務成績が上位の者については昇給幅を大きくし、下位の者については小さくする昇給制度を実施しております。

早坂委員

 教員の中には、学習指導や学級経営などを適切に行えない、いわゆる指導力不足教員がいることが問題になっています。この指導力不足教員の定義と判断基準などについて伺います。

〇松田人事部長

 指導力不足教員につきましては、教育委員会規則において要件が定められておりまして、教科に関する専門的知識等の不足、指導方法が不適切あるいは児童生徒を理解する能力等が欠けているなどにより、学習指導、学級経営、生活指導などを適切に行うことができない者で、東京都教育委員会教育長が校長等の申請に基づき指導力不足であると認定した教員をいいます。
 指導力不足教員の認定に当たりましては、申請書類だけではなく、実際に学校に出向きまして授業観察を行い、要件に合致しているかどうか判断をしております。

早坂委員

 では、指導力不足教員はどのくらいいるのでしょうか。また、制度発足以来の実績はどのようになっていますか。あわせて、指導力不足教員と認定された場合、どのような措置がなされるのか伺います。

〇松田人事部長

 今年度、指導力ステップアップ研修を受講している指導力不足教員の人数は十三名でございます。平成十三年度から十八年度におきまして、指導力ステップアップ研修を受講した教員は五十六名でございまして、そのうち、指導力が改善され現場に復帰した者が十七名、研修途中に自主退職した者が二十名、教員として不適切と判定された者が十四名、その他休職者等が五名でございます。
 次に、指導力不足教員に対する措置についてでございますが、指導力不足教員と認定された教員は、指導力改善のため、指導力ステップアップ研修が命ぜられ、必ず受講しなければなりません。指導力ステップアップ研修では、長期、通所、短期の三つのコースが設定されておりまして、個々の教員の状況に応じてコースを決定し、教職員研修センター及び当該教員の所属校において研修を実施することとしています。
 なお、指導力不足等により日常の指導に著しく困難を来している教員は、教壇から外しまして、年間を通して主な研修場所を教職員研修センターとする長期講習を受講させることとしております。

早坂委員

 東京都内の公立学校には六万人の教員が勤務しています。マスコミで報じられる学級崩壊などの事例数に比べると、指導力不足と認定すべき教員が今年度はわずか十三人とは驚きで、実際にはそれ以上たくさんいるのではないかという印象を率直に持ちます。
 指導力不足教員の認定に当たって提出する申請書類は膨大なもので、それが校長に申請をちゅうちょさせる遠因だとも聞きます。あるいは、指導力不足教員が認定されると、それを埋め合わせるためにその学校の教員全体の負担が重くなり過ぎるので、それゆえに申請しないという見方もあるようです。そのほかにも、現行の指導力不足教員の認定の仕組みには幾つか課題があるように思います。ご見解を伺います。

〇松田人事部長

 指導力不足教員に係る課題についてでございますが、お話の指導力不足教員に係る申請手続に関しましては、制度導入時、申請に際して相当数の提出資料が必要とされたことから、校長、副校長にも負担感がございました。また、昇任直後の教育管理職の一部には制度の理解不足があることなども申請者数に影響を与えている可能性がございます。そこで、今年度は申請書類の簡素、簡略化などによりまして負担軽減を図るとともに、区市町村教育委員会を通じ、機会あるごとに制度趣旨の周知徹底に務めてまいりました。
 次に、指導力不足教員が教壇を外れた後の後任の補充についての問題でございますが、指導力不足教員の所属校では、指導力不足教員が指導していた児童生徒に対しまして学校全体でサポートをしているところでございますけれども、後任の補充については指導力のある教員を配置することが大事だと考えております。今年度、所属校支援の観点から、指導力不足教員に係る後任教員の配置について、従来より繰り上げて決定することといたしまして、一般異動の中で教員を配置できるよう改善したところでございます。
 今後とも、申請手続や後任の補充等の課題につきまして、区市町村教育委員会や現場の校長の声も聞きながら適切に対応してまいりたいと考えております。

早坂委員

 教員が、年度途中、短期あるいは長期に欠ける場合の対応について伺います。

〇松田人事部長

 教員が短期的に休暇を取得する場合の児童生徒への指導につきましては、時間割の変更や他の学年、他の学級担当の教員による指導の実施など各学校におきまして指導体制を整えて対応をしております。また、教員が妊娠出産休暇や育児休業を取得した場合には、その代替となる臨時的任用教員を配置しております。病気や死亡等の事由によりまして長期にわたり欠員となる場合には、その時期や期間などに応じまして期限つき任用教員や非常勤講師の配置を行っております。

早坂委員

 非常勤講師とはどういうものでしょうか、お伺いをいたします。

〇松田人事部長

 非常勤講師とは、地方公務員法の適用を受けない特別職の非常勤職員でございます。非常勤講師の勤務内容は教科指導の授業のみに限られておりまして、学級担任や校務分掌を担当することはできません。任期は、欠員となる期間に応じ、最長一年間でございます。

早坂委員

 従来の補欠制度にかわって期限つき任用教員という新しい制度が導入されました。これにより何が変わったのか伺います。なお、特別認定による任用もできると聞きますが、これはどういうものか伺います。

〇松田人事部長

 いわゆる団塊の世代の大量退職に伴います採用数の増への対応を、単に大量の新規採用者で補充すれば教員のいびつな年齢構成を是正することができないばかりでなく、質の低下を免れないと考えております。そこで、教員採用候補者名簿に登載する数をこれまで以上に精査をいたしまして、確実に必要な数を新規採用することとし、その上でなお、学級増や勧奨退職、病気休職等、予測困難な欠員がある場合に備えて、地方公務員法に基づいて期限つき任用教員制度を導入することといたしました。
 期限つき任用教員の勤務内容は正規教員と同様でございまして、授業を行うだけでなく、学級担任や校務分掌も担当でき、任用期間は最長一年間でございます。期間に定めがあること以外は基本的に正規教員と同様で、地方公務員法の適用を受けます。
 任用に当たりましては、教員採用選考において採用枠の関係で合格に至らないものの、それに準ずる成績上位者から任用をしております。
 なお、特別認定とは、名簿登載者がいない場合に、要項を定めまして都教育委員会が特別に認める者を名簿に追加し、任用することができるという制度でございます。

早坂委員

 期限つき任用教員は、能力的には十分合格レベルに達しているが定員の関係でたまたま不合格になってしまっただけという見方があるかもしれません。しかし、期限つき任用教員は、合格者のうちで成績が最も下位の者であります。だからこそ正規の合格者と違って任用が継続されないのが原則です。それならば、期限つき任用教員にこそ研修をしっかり受けてもらうべきでありますが、年度途中の採用であったならば正規合格者が受けた研修すら受けられない可能性が出てきます。
 さらに、その期限つき任用教員にすら入れなかった者に対し、教員不足状態を解消するために広げた枠をさらに広げたのが特別認定です。すばらしい青年が期限つき任用教員としての活躍ぶりを高く評価され、翌年四月、晴れて正規教員として採用されるという事例が頻発されることを願います。
 しかし、可能性の話であるならば、もし仮に指導力不足教員が年度途中に教壇から去り、その後がまに入った教員が期限つき教員であるならば、またしても指導力に劣るという前提で状況に対応すべきであります。指導力不足教員だと認定されて教員が欠けた場合の後任補充には最大限の手厚い指導体制で臨み、これまでのおくれを挽回する必要があると思います。
 来年度の期限つき任用教員の採用想定数や今後のあり方について伺います。

〇松田人事部長

 平成二十年四月一日付の採用候補者として二千九百八十一人の採用選考合格者を確保いたしましたが、学級増や勧奨退職、病気休職等予測が困難な欠員に備え、期限つき任用教員採用候補者名簿の登載者は千百九十七名といたしました。期限つき任用教員として任用した場合には、教育公務員としての基礎的要素、学習指導、特別活動、生活指導、進路指導などの専門的な知識を身につけさせるため、新規採用者向けの初任者研修の一部を受講させ、年間を通じて体系的な指導を行っているところでございます。
 今後の育成のあり方について、区市町村教育委員会や学校長の意見を聞きながら、さらに検討を進めてまいります。

早坂委員

 これまで期限つき任用教員について、るる伺ってまいりました。学校現場で校長の指導を受けながら教員としての資質を高め、一方で、優秀な者には正規教員になる道をつくり、他方で資質が不十分な者は教員を去っていくというこの制度は、教員の大量採用を控え、かつ教員の質を見きわめるには有効な制度であると思います。
 しかしながら、期限つき任用教員は、任用が期限つきではあっても正規教員であり、新規採用教員として教壇に立ち、児童生徒の教育に当たるわけでありますから、そこに学校や教育委員会の支援は欠かせません。また、将来の優秀な教員となるために育てていくということの必要性は、むしろ正規任用の教員より大きいかもしれません。今の答弁では、初任者研修の一部を受講させるということでありましたが、彼らには、初任者研修の全部プラスアルファの研修が必要ではないでしょうか。
 制度が導入されてまだ一年足らずです。研修の拡大を初め、ぜひよりよい制度となるよう、改革を続けていただくようお願いいたします。