2010.12.08 : 平成22年第4回定例会
「アジア旅客機ビジョン」

四十一番(早坂義弘君) 

 次に、アジア旅客機ビジョンについて伺います。
 石原知事が提唱し、アジアの各都市が連携して、大都市共通の課題解決に取り組んできたアジア大都市ネットワーク21での共同事業に、中小型ジェット旅客機の開発促進があります。
 航空機の開発は、これまで欧米諸国が圧倒的なシェアを占めてきました。しかし、例えば太平洋を横断するようなジャンボジェットの需要はほぼ満たされ、今後はリージョナルジェットと呼ばれる、もう少し近距離の中型、小型ジェット機の需要が急速に拡大するだろうと予測されています。
 そこで、自動車でいえば、ハイブリッド車や電気自動車の開発で我が国が世界をリードしたように、リージョナルジェットという新しい分野においても、我が国の持つ省エネ、低騒音などの高い技術力で世界の航空産業に貢献できるチャンスが、まさに目の前にあります。
 航空機の開発には、自動車の開発と比べると圧倒的多数の部品を必要とするため、都内の中小企業への経済波及効果がとても大きいとされます。
 また、自動車の百分の一の故障率を求められ、高い技術力を必要とするため、我が国の産業基盤全体の高度化にもつながります。
 しかし、航空機の開発には莫大な初期投資と長期的投資が必要です。アジアが欧米に次ぐ航空機産業の第三の担い手になるためには、我が国はもちろん、アジアの各国がアジア大都市ネットワーク21の共同事業で培った都市間、企業間の連携をより深化させていかなければなりません。
 先日、羽田空港で開催された実務者会議において、アジア旅客機ビジョンが発表されました。私も出席をさせていただき、アジア各国や我が国航空機メーカーの発表、そして、石原知事の話を聞き、航空機開発がアジアを、そして我が国を牽引する大きな力になると確信いたしました。
 そこで、知事に、アジア旅客機ビジョンの実現に向けたご決意を伺います。

〔知事石原慎太郎君登壇〕

◯知事(石原慎太郎君) 

 早坂義弘議員の一般質問にお答えいたします。
 アジア旅客機ビジョンについてでありますが、世界を時間的、空間的に狭くしたのは、まさに航空機の開発、発展でありまして、航空機こそ現代文明を象徴する人間の有効な道具だと思います。
 欧米中心の航空機産業において、かつて日本ではYS11という、ターボプロップでしたけど、非常に優秀な旅客機を開発しました。また、インドネシアもIAeという会社が同じような旅客機を開発しましたけれども、これはアメリカの妨害、つまり販路を封じられることで、残念ながら挫折しました。YSの場合には完成しましたけれども、売り先が見つからずに、残念ながらああいう終わり方をしたんですが、IAeのバンドンの会社に行きますと、そのときの悔しさを忘れないために、会社の前につくりかけの飛行機が飾ってありますが、このとき暗躍したのが、後にロッキード事件で有名になった、クラッター、コーチャンというロッキードのあの重役です。
 いずれにしろ、アメリカは太平洋戦争の挑戦に、日本の航空機の優秀性のためにたじろいで、それに懲りまして、以来、日本の航空機産業の台頭というのを徹底して妨害してきました。現在、アメリカの軍用機のコックピットはほとんど日本製ですね。セラミック、液晶体、ジャンボクラスの大きな旅客機のコックピットもそうですが、これは残念な現象でありまして、アメリカの意向で、日本は依然としてアメリカの航空機産業のパーツメーカーの域を出ない。
 中曽根さんの時代に、三菱重工は非常に優秀な次期支援戦闘機を計画しましたが、アメリカはその性能に驚いて、暗躍しまして、これまたこれをつぶしました。そして、F15の特別改良というものを日米でやって、日米だけがそれを使うということで、日本の頭をなでましたが、大分世の中が変わってきまして、最近、日本が自前の軍用機をつくることをアメリカは一部に限って容認しました。かつてアメリカが供給していたC1という輸送機、あるいは対潜哨戒機のP3Cの後続機は日本製ができつつありました。
 私も試乗してきましたけれども、いずれにしろ、軍用機は別にしても、世界の歴史の文明が欧米からアジアに移ろうとしている今、非常に有効な、特に中小型の非常に需要の高い、議員ご指摘のように中小型の、いってみれば観光バスが二台そのまま乗りつけて全員が乗れるような規模の、百数十名の規模の旅客機というのは非常に需要が高いものでありまして、実は三菱も、これ、最初からつくろうと思ったんですが、アメリカが妨害して、最初は三十五人がやっと七十五人になりましたけれども、これでも足りないんです。
 これは、別にヨーロッパを相手にしなくても、アジア全体での販路というものを考えれば十分できることでして、インドネシアに限らず、インドにはHALという非常に優秀な航空機会社があります。台湾にも、あるいはマレーシアにも航空技術に関する、非常に部分的ではありますが優秀な技術を持った会社があります。
 こういった会社が協力して、アジア製の旅客機をつくるということは、アジアの成熟にもつながりますし、やはり世界の歴史の新しいページをアジアが開くということにもつながると思います。
 今般、専門家の検討委員会から提言をいただいたアジア旅客機ビジョンはまさにそれを目指すものでありまして、十年後をめどに共同開発することを打ち出しておりますが、今後、ビジョンの考え方に沿って、アジア製の旅客機実現に向けた取り組みを東京も協力して、強力に進めていきたいと思っております。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁します。