2007.03.01 : 平成19年文教委員会 本文
「公益法人制度改革」

早坂委員 

 公益法人制度改革について伺います。
 昨年六月、民法上の社団法人、財団法人の仕組みを抜本的に見直す公益法人制度改革三法が公布されました。平成二十年からスタートする新制度では、非営利の社団法人、財団法人は二つに分類、すなわち二階建ての構造になります。一階部分は、一般社団法人、一般財団法人という名称で、公益性の有無にかかわらず、登記のみで簡単に法人格を取得できるようになります。二階部分は、公益社団法人、公益財団法人という名称になり、一階から二階に上がるためには、民間の有識者で組織される審議会の公益認定を受ける必要があります。これに伴い、本定例会に、東京都において公益認定を行う公益認定等審議会条例が提案されたところです。
 そこで、伺います。公益法人制度改革三法の施行は平成二十年十二月を目途と聞いており、二年間の準備期間があります。東京都は、今回、公益認定等審議会条例を制定するわけでありますが、審議会が具体的に動き始めるのはいつごろになるのか、お伺いいたします。

◯和田都民生活部長 

 今後のスケジュールでございますけれども、本定例会で東京都公益認定等審議会条例案につきましてご審議をいただき、議決をいただきましたならば、具体的な審議会の委員の選定などの準備作業を進めていきたいと考えております。
 そして、ことしの秋ごろには東京都公益認定等審議会を立ち上げまして、国の検討状況といったものも参考にしながら、都としての具体的な公益認定基準の運用指針などの審議を行っていただくことを考えております。
 そして、平成二十年の十二月を期限とする法の施行と同時に、円滑に審議会の公益認定作業が進められるよう準備をしてまいりたいと考えております。

早坂委員 

 現在、東京都所管の公益法人は八百四十八存在していますが、法律の施行後は、これらの現行法人も改めて公益認定を受けて公益法人となるか、あるいは公益性を要件としない一般社団、財団法人に移行するかを選択していく必要があります。どちらを選択するにせよ、新制度への移行の準備は現行の法人にとって負担がかかることから、今後の改革の動向に大きな関心が寄せられています。
 東京都としても、公益認定事務の準備を進めていく上で、現行法人の意向を把握しておくことが必要であると思います。
 現在、東京都所管法人のうち、公益認定を受けて新制度下の公益社団法人、公益財団法人に移行しようとしている法人はどのぐらいあるか、お伺いいたします。

◯和田都民生活部長 

 現行法人の移行でございますけれども、昨年の十一月に、現行の公益法人を対象にいたしまして制度改革の説明会を開催いたしました。それにあわせまして、公益法人制度改革に関するアンケート調査を実施しております。
 その結果によりますと、回答をいただいた法人の中で、七九・六%が公益社団、財団法人への移行を希望しておりまして、一般社団、財団法人への移行を希望するものが六・三%、そして、未定と回答した法人が一一・四%ございました。

早坂委員 

 およそ八割の法人が、新制度においても公益法人として存続することを希望しているというご答弁でありました。残りの二割には、行政庁の関与を受けず、自由に活動できるメリットを考えて、一般社団、財団法人を選択するケースがあると思いますが、大多数の法人は福祉や教育などの多様な領域で誠実に公益事業を営んできた実績があり、今後も公益認定を受けて、引き続き社会に貢献していく意欲を持っているんだろうと思います。
 そこで、公益認定の申請は、法人の定款や事業計画書、収支予算書などを提出して行うわけですが、現行法人が申請する場合、法人のこれまでの長年の活動実績は審査会の評価の対象になるのか伺います。

◯和田都民生活部長 

 既存法人の活動実績が評価の対象になるかどうかという点でございますけれども、新制度におきましては、法律によりまして、公益認定の基準として、目的、それから事業、財務、組織に関することなど十八項目の要件が定められております。この公益認定の基準では、ただいまお話にございました、活動実績を有しているかどうかということは要件とはされておりませんで、公益認定の審議会において、法人が行う事業が公益目的事業に該当するのか、また、事業の内容や、その組織、財務の状況が認定基準に適合しているかどうか、そういった点を審査し、判断されていくというふうになっております。

早坂委員 

 審議会の公益認定は、あくまで将来に向けての事業計画の妥当性や実現性、法人の財政基盤や事務能力について審議されるものだと理解をいたしました。
 新制度での公益認定基準の説明がありましたが、現行法人は公益認定基準に適合した内容にするため、これまでの事業や組織の見直しも必要となってくることから、今後の対応についても心配があるのだろうと思います。
 そのような観点から、先ほどお示しいただいたアンケートについてお伺いいたしますが、公益社団、財団を目指すと回答した法人の中で、公益認定基準に適合させるために、現時点でどのような点をみずからの課題として受けとめ、取り組んでいこうとしているのか、東京都としていかように把握しているか伺います。

◯和田都民生活部長 

 アンケート調査によりますと、法人が新制度の公益法人を目指すに当たり課題と考えている事項として、次の二点が多く寄せられております。
 まず第一に、公益法人の本来目的は公益事業でございますので、そのすべての活動に占める公益目的事業の割合が五〇%以上であることが要件とされております。しかしながら、今のところ、この算定方法がまだ明確になっていないということもございまして、この基準を達成できるかどうかということについて、およそ四八%の法人が課題であるというふうにとらえております。
 第二番目は、公益法人の収益というのは、速やかに公益事業に使用するというのが原則でございますが、これにつきまして、剰余金を翌年度に繰り越すことについて一定の制約がございますが、それをクリアできるのかどうかということが課題であるというふうに二二%の法人が回答いたしております。

早坂委員 

 公益法人は、そもそも公益事業を実施しているものだと思いますが、現行法人は、公益目的事業の比率のどのようなことについて心配をしているのか伺います。

◯和田都民生活部長 

 公益目的事業でございますけれども、公益目的事業とは、不特定多数の者を対象とする事業でございまして、いわゆる共済事業など、その構成員の利益、これを共益と呼んでおりますけれども、そういったものを目的とする活動や、特定の者の利益を目的とする事業は公益目的事業に当たらないというふうにされております。
 しかしながら、構成員が同種の業を営む者など特定の者に限られる場合でありましても、その受益の効果が広く社会全体に及ぶ場合には、公益事業と判断されることもあろうかと考えております。
 このように、公益性の判断というのはなかなか難しい面がございまして、必ずしも一律に行えるものではなく、現行法人としては、現在行っている事業の中で、新制度における公益目的事業として認定されるものがどのくらいあるのか、また、その結果、先ほど来お話し申し上げております、その基準である五〇%を超えることができるのかどうかといった点を課題としているものと思われます。
 いずれにいたしましても、認定基準の詳細につきましては、今後、国から出される政省令等で明らかになる予定でございまして、法の施行後は、審議会において、それぞれの法人の実態を踏まえ、個別具体的に公益性の判断がなされるものと考えております。

早坂委員 

 公益認定の基準は法律に規定されたけれども、具体的な内容はまだ決まっていないということでありますが、例えば医師会は、会員は医師に限定されており、その事業の中で、医師としてのレベルアップのための講演会、研修会があります。これらの事業は、一般的には会員、すなわち構成員の利益のためのものでありますが、こうした事業は地域における公衆衛生の向上に大きく寄与することになるので、公益性があると考えてよいとも思います。この例のようなことは、一般的業界団体、業種団体についても同様にいえると思います。そうした事業が公益事業と認められるように、適切な運用を求めておきます。
 次に、法人が新制度への移行準備を進めるためには、基準が早期に明らかになり、周知される必要があります。現行法人の規模も大小さまざまだと思いますが、個々の課題を検討していくためには、実際に試算してみるなど会計上の専門知識も必要になり、小規模の法人では対応困難な面があります。
 現行法人を指導監督する東京都として、今後の改革の動向についての十分な情報提供や、相談などの支援が求められていると思います。都民向けの一般的なPRを行い、制度改革の理解を得ることが必要なのはもちろんですが、このほかに、現行法人、特に小規模の法人の不安を解消するため、これらの法人に対する個別相談体制を整備すべきと考えますが、いかがでしょうか。

◯和田都民生活部長 

 都といたしましては、都民、法人向けに、パンフレット、それからホームページ等によりまして、制度改革についての周知を図っているところでございます。
 さらに、現行の所管法人に対しましては、国による公益認定基準の詳細が示される本年の夏以降、ただいまお話にもございました説明会の開催、そして個別相談会などをきめ細かく実施し、各団体の要望にこたえていきたいと考えております。
 申請者が新制度への準備を遺漏なく行えるように、情報提供の充実や事務執行体制の整備を図り、平成二十年十二月までに施行される制度改革に向けて万全を期していきたいと考えております。

早坂委員 

 現行法人が五年間の移行期間の中で、公益認定基準に適合するための必要な見直しを行って円滑に移行できるように、東京都の法人への適切な支援をお願いいたします。
 ところで、民間による公益活動としてNPO法人制度があります。NPO法人制度は、新しい公益認定法人制度とは別の制度として、現行どおり存続されるものであります。
 NPO法人は、平成十年の施行以来、市民によるボランティア活動を支える制度として社会に定着し、社会貢献活動として一定の評価を受けています。現行のNPO法人の現状と課題はどのようなものか、お伺いいたします。

◯和田都民生活部長 

 NPO法人の関係でございますけれども、阪神・淡路大震災などを契機にいたしまして、平成十年十二月に特定非営利活動促進法、いわゆるNPO法が施行されまして、社会貢献活動を行う民間団体に法人格を付与する制度が創設されております。
 その後八年余りが経過する中で、現在、全国で約三万、都で約五千三百の団体がNPOとして法人格を取得し、教育、文化、保健・医療や福祉、青少年育成など幅広い分野で活動いたしております。
 しかしながら、一方、こうして法人数が増大してきますと、法人格取得の簡便さというものもございまして、NPO法人であることを利用して、必ずしも公益、非営利とは認められない活動を行う法人や、法令違反を犯す法人、事業活動を行わないような休眠法人といったものも見受けられるようになっております。
 そこで、都といたしましては、法人運営の健全化を図る見地から、平成十七年三月に東京都におけるNPO法の運用方針を策定し、さらに、昨年の四月には、取り消し処分等に関する適用基準を明確化して、指導監督を強化しているところでございます。

早坂委員 

 今回の新しい公益法人制度及びNPO法人制度は、いずれも従来の行政部門や民間の営利部門では満たすことのできなかった社会ニーズに対応する民間非営利部門の発展を促進するもので、官と民の役割を考える上で、新しい時代を切り開く前向きな意義を有するものだと思います。今後とも東京都がさらなる応援をしていただくようお願いをいたします。