2006.09.15 : 平成18年厚生委員会 本文
「宿泊所」

早坂委員 

 一八第一四号、「やすらぎの里」開設・開業反対に関する請願について質疑を行います。
 この請願は、我が党の松原議員、吉野議員、石森議員が紹介となっております。私も請願者のお訴えを拝見させていただき、また、ただいま理事者からも現状について説明がありましたが、不明な点がありますので、質疑を行います。
 宿泊所とは、先ほどの理事者の説明によれば、社会福祉法上の第二種社会福祉事業で、ホームレスなど生活困窮者のために無料または安い料金で宿泊させる施設ということであります。また、こういう施設は、法律で、施設を開設した日から一カ月以内に知事に届け出をしなければならないということであります。
 社会福祉事業であれば余り問題はないように思われますが、現実にはこのように五千人近い、大変多くの地元の住民の皆様から開設反対の請願が出ている背景には、これまでの宿泊所運営の実情などもあるように思います。
 そこで、これまで東京都は宿泊所の運営についてどのような指導を行ってきたか、お伺いいたします。

◯永田生活福祉部長

 社会福祉法は事業者の届け出義務を課するにとどまるのに対しまして、都は、宿泊所利用者が安心してサービスを受けられるよう、平成十一年十一月に、全国に先駆けて、宿泊所の届け出に関するガイドラインを策定いたしました。
 その後、多様な事業者が宿泊所経営に参入し、宿泊所が急増いたしまして、居室がプライバシーへの配慮に欠けたり、建築基準法や消防法に適合していないなどの問題のある施設もふえたため、より適切な施設運営を確保する目的で、平成十五年四月に、従来のガイドラインを全面的に改正いたしまして、宿泊所設置運営指導指針を策定したところでございます。平成十六年一月にも再度細部にわたって改正をいたしまして、宿泊所への指導を強めているところでございます。
 なお、平成十六年十二月には、運営面で問題となる宿泊所がございまして、再三の指導にもかかわらず改善が見込まれる状況になかったことから、社会福祉法の規定によりまして、宿泊所事業者に対しまして事業の停止を命じたことがございます。

早坂委員

 居室の環境がプライバシーへの配慮に欠けたり、建築基準法や消防法に適合していないなどの問題がある宿泊所もふえたため、より適切な施設運営を確保する必要があったということだと思います。
 そこで、今ご答弁にありました東京都の宿泊所設置運営指導指針に定められている内容、事業者の遵守事項や設置手続面などでの定めについてお伺いいたします。

◯永田生活福祉部長

 宿泊所の設置運営指導指針では、一つ目として、建築基準法、消防法の基準を遵守すること、二つ目には、最低居室面積の確保などによる居住者の環境の向上、三つ目には、経理状況の公開、明確化、四番目に、施設開設前に都に対して事前相談を行うこと、五番目には、地域住民の理解を得るように努めること。具体的には、宿泊所の開設前に地元の自治会、町会などへの説明会を行いまして、近隣住民の方々の理解を得るための最大限の努力を払うことなどを事業者に対して求めているところでございます。

早坂委員

 東京都も、宿泊所の適切な運営を確保するために、問題ある宿泊所に事業停止を命じるなど、いろいろと指導に努めてきたということがよくわかりましたが、そこで今回のようなやすらぎの里のような請願が出てきたわけであります。やはり社会福祉事業である以上、法令を遵守し、しっかりと近隣住民の皆さんのご理解を得ることが大前提であると思います。このことは東京都の指導指針にもきっちり明記されていることであります。
 ところが、どうもこの件に関する請願者のお訴えを拝見する限りでは、地元の皆さんが不信や不安感を抱かれるのももっともであるように感じます。例えば、この請願書には、虚偽の開設目的を住民に説明したであるとか、地域住民の合意が得られない中で建物の改修工事を開始、継続したなどと書かれています。あるいは虚偽の役職名で事業を遂行しようとしておりとあり、聞くところでは、住民説明会で山廣建設株式会社なる名刺を事業代表者が差し出したようであります。この辺も住民の皆さんにとってはよくわからないことであろうと思います。
 そこで、東京都が把握している範囲で、この事業者はどういう業者なのか、地域からの信頼や説明責任に欠けていることはないのか、あるいは開設後の管理能力は担保されるのか、地域住民と事業者とのやりとりなどについて、もう少し具体的に状況の説明をお願いいたします。

◯永田生活福祉部長

 この事業者についてでございます。事業者は中野区本町に所在する特定非営利活動法人でございまして、いわゆるNPOという法人でございます。平成十八年三月に認証を受けてございます。
 事業者が平成十八年三月に事前相談に来訪した際には、都は、指導指針に基づきまして、法令の遵守や住民説明会を実施するよう指導したところでございます。
 その後、この事業者が四月十四日と六月七日の計二回、住民説明会を実施したというふうに聞いておりますけれども、住民に事前説明がない中で工事が開始されていたこと、それから都への届け出内容と住民への説明内容が相違していたこと、施設の管理体制について明確な説明がなされていないことなどによりまして、住民の皆様方の間に不信感と不安感が広がりまして、六月七日の住民説明会では、住民から事業者に開設反対の意思を伝え、以降、地元住民と事業者との間に話し合いは持たれていないと聞いております。
 なお、先ほどの先生のお話の中にございました建設会社でございますけれども、この建設会社は、過去、都内において二カ所で宿泊所開設の計画があったというふうに聞いておりますが、住民の方々との合意を得るまでに至らず、開設をしていないというのが現状でございます。

早坂委員

 繰り返しになりますが、社会福祉事業を行おうとするのであれば、法令を遵守し、近隣住民の皆さんの十分なご理解も得た上で事業を始めることが大前提であります。その点、二回の説明会以降、住民と事業者との間に話し合いは持たれていないという現実がありますので、この事業者は地元住民の皆さんのさまざまな心配や不安にこたえる義務があるのではないでしょうか。東京都はこの事業者に対し今後どのように対応していくつもりか、所見をお伺いいたします。

◯永田生活福祉部長

 事業者は、法令を遵守することはもとより、事業の円滑な運営が可能となるよう、地域の住民の方々のさまざまな心配や不安を取り除くため、事前に十分な話し合いをするなど、努力を重ねていくことが大変重要であると考えております。
 本件の宿泊所開設に当たりましては、生活保護受給者の施設利用が多く見込まれる実態を踏まえまして、地元の大田区などの関係機関と密接に連携をしながら、指導指針に沿いまして、今後もしっかりと適切に指導してまいります。

早坂委員

 ぜひとも地元の皆さんの不安が解消されるよう、引き続き東京都の強力な指導をお願いいたします。
 以上です。