2010.02.16 :平成22年新銀行東京に関する特別委員会
「新銀行東京」

早坂委員 

 本日の委員会は、前回ご説明いただいた株式会社新銀行東京のこれまでの経緯についてに対する質疑であります。これらの内容は、すべてこれまで十分に常任委員会で審議されてきたことばかりでありますが、ここにおられる委員が共通認識を持つために、改めて基本的なことを確認したいと思います。
 私は、新銀行東京のこれまでの経緯については、大きく三つの時期に分けて考えられると思います。まず、設立までに至る経緯が第一。次に、開業から、著しい経営悪化、追加出資までが第二。そして、再建途上の現在と今後が第三であります。
 新銀行東京が開業後わずかにして経営悪化に至ったことはまことに遺憾であります。しかし、そのことのみをもって、新銀行東京のすべてが無意味であり、存在そのものを否定するかのようにいうのは、短絡的で無責任かつ行き過ぎた論理であると考えます。
 新銀行東京のことを正しく理解するためには、その発案から現在に至るまでの時点時点について冷静に理解することが必要であります。したがって、第一回の特別委員会ということもありますので、今回はこうした観点から当時の状況について一つ一つお伺いをいたします。
 では初めに、新銀行設立までの経緯についてお伺いをいたします。
 新銀行東京の設立が検討されていたころ、我が国の経済状況はどのようなものであったか、当時の時代背景について伺います。

〇中村産業労働局金融監理室長 

 新銀行設立の検討が行われた当時は、バブル経済崩壊後の長引く景気低迷に加え、デフレや急激な産業構造の変化の中で、企業倒産件数は高水準で推移してございました。具体的に申し上げますと、当時の国内総生産は、十三年度、十四年度に対して前年度比マイナスとなり、十五年度は最悪期は脱したものの、前年度からわずかに〇・八%上昇した程度と、低迷状態が続いておりました。
 また、平成十五年度の全国企業倒産件数は一万六千二百五十五件で、前年度の約一万九千件という最悪期は脱したものの、依然として深刻な状況でございました。
 さらに、平成十五年の完全失業率は五・三%と、前年度から引き続き高水準でございました。

早坂委員

 新銀行東京の設立が検討されていた平成十五年当時も、今日同様、相当厳しい経済状況であったと理解いたしました。
 では、その当時、金融機関の経営状況、中小企業向け融資の姿勢はどのようなものであったか、伺います。

〇中村産業労働局金融監理室長 

 平成十五年当時、多くの金融機関はバブル崩壊により生じた不良債権の処理に追われ、自己資本は大きく毀損しておりました。これに対して、政府においては、平成十四年に金融再生プログラムを公表するなど、日本の金融システムと金融行政に対する信頼回復に取り組んでいたところでございます。
 このような中にあって、各金融機関は、信用リスクを回避するため、貸出先の選別を強め、信用力が相対的に低い中小企業に対し、いわゆる貸し渋り、貸しはがしが行われるなど、中小企業の資金調達は厳しい状況に置かれておりました。

早坂委員

 金融機関が貸し渋り、貸しはがしを行う中で、借り手である都内の中小企業を取り巻く経済金融環境はどのようなものであったか、伺います。

〇中村産業労働局金融監理室長 

 日本銀行の統計によれば、平成十五年三月の国内銀行における中小企業向け融資残高は百九十四兆円であり、平成十三年三月の二百二十九兆円からわずか二年で、三十五兆円も大幅に減少しました。
 また、都内中小企業における資金繰り状況についても、資金繰りが苦しいと回答した割合が四〇%を超えており、中小企業に十分資金が行き渡っていない状況でございました。さらに、都内企業の倒産件数も、平成十四年が三千七百四十七件、十五年は三千百八十五件と、いずれも三千件を超える高い水準で推移しておりました。
 このように、都内の中小企業を取り巻く経済金融環境は極めて厳しいものであったと認識してございます。

早坂委員

 中小企業を取り巻く環境は厳しく、他方で資金を供給する側の金融機関も不良債権処理に追われていた状況がわかりました。そうした経済金融環境の中、新銀行を設立しようとした石原知事の思いとはどのようなものであったか、伺います。

〇中村産業労働局金融監理室長 

 知事は、二期目の選挙公約として、東京発都市革命を訴え、その具体策の一つとして、「中小企業の能力を引き出す新しい銀行を創設」を掲げ、当選いたしました。
 知事は、銀行を設立しようとした理由につきまして、本当に大切なのは、ろくな担保も持たぬ、しかし可能性に満ちた零細な企業の窮地をいかに救うかということだと述べております。また、都は既に幾つかの制度融資で零細企業対策は行ってはきたが、それでもなお、それらの制度の対象にもなり得ぬ零細な企業に、さらに手を伸べる必要は絶対にあると信じているとも発言してございます。

早坂委員

 石原知事は、中小零細企業を守るという使命感から、新銀行東京の設立を思い立ったのであり、その公約を掲げて戦った知事選において、三百八万票という圧倒的な都民の支持を受け、再選を果たしました。その石原知事の思いを具現化したのが、平成十五年五月に新銀行の創設についてとして公表された新銀行構想と、それに続き平成十六年二月に策定された新銀行マスタープランであります。新銀行の経営上の基本指針となった新銀行マスタープランは、だれが、どのように検討したのか、あわせてその内容について伺います。

〇中村産業労働局金融監理室長 

 新銀行マスタープランは、本会議や財政委員会でのご議論を踏まえて、銀行の業務内容をより具体的に取りまとめたもので、新銀行の業務運営の指針となるものでございます。新銀行東京の経営理念や業務内容、事業収益計画、組織、体制などをその内容としてございます。
 新銀行マスタープランは、監査法人やコンサルティング会社など、多くの金融の専門家や都職員を含む、最大約百名が参加して作成されたものでございます。メンバーの中には、後に新銀行東京の代表執行役となる仁司泰正氏を初め、複数名の執行役候補者も含まれてございました。
 また、作成に当たっては、預金者や中小企業者の意向もモニタリングするなど、多面的な視点から検討を重ねてきたものでございます。

早坂委員

 新銀行マスタープランは、当時の経済金融環境を踏まえ、多くの専門家が参画し策定したものである旨の答弁がありました。この新銀行マスタープランの特徴は、スコアリングモデルによるスピーディーな資金供給であります。
 では、このスコアリングモデルとはどのようなもので、当時の評価はどうであったか、伺います。

〇中村産業労働局金融監理室長 

 一般にスコアリングモデルとは、コンピューターで中小企業の財務情報や取引状況などの情報を分析し、融資の貸し倒れリスクを統計的に算出するモデルをいいます。
 金融庁は、平成十五年三月に公表したリレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムの中で、新しい中小企業金融への取り組みの強化の一つとして、事業からのキャッシュフローを重視し、担保、保証に過度に依存しない融資の促進を図る観点から、各金融機関に対して、スコアリングモデルの活用などを要請していたところでございます。こうした状況のもとで、メガバンクを初め多くの金融機関においてスコアリングモデルを活用したビジネスローンが商品化されました。
 平成十五年、十七年当時のスコアリングモデルに関する状況は以上のようなものでございました。

早坂委員

 新銀行東京が開業した平成十七年前後には、担保、保証に過度に依存しない融資を図るために、多くの金融機関でこのスコアリングモデルを導入したとのことでありますが、その後、このスコアリングモデルはどのように扱われたのか、伺います。

〇中村産業労働局金融監理室長 

 スコアリングモデルの活用につきましては、その前提として、業種、財務内容、規模、地域など、リスク分散ポートフォリオを確立できるだけの顧客層の確保が必要でございましたが、導入当初は標本数が少なく、データの精度が不完全でございました。そのため、スコアリングの判定機能だけでは必ずしも企業の実態を反映していないケースもあり、各行とも想定以上のデフォルトが発生する結果となりました。その結果、金融機関の融資運営は、スコアリングだけではなく、企業の実態を詳しく把握した上で与信判断をする方向に再びシフトしてまいりました。

早坂委員

 では、新銀行東京におけるスコアリングモデルの扱いはどうだったのか、伺います。

〇中村産業労働局金融監理室長 

 新銀行東京が外部弁護士に依頼した外部調査報告書によれば、スコアリングシステムが有効に機能するためには、スコアリングの結果算出される想定デフォルト率が実績デフォルト率と大きく乖離しないことが必須の前提であったにもかかわらず、遅くとも平成十八年八月末時点において、想定デフォルト率と実績デフォルト率との間に大幅な乖離が生ずる結果となっており、融資審査においてスコアリングシステムが想定どおりの機能を発揮できなかったと指摘されてございます。また、このスコアリングモデルのみに依存した融資審査等が新銀行東京の経営悪化を招いた原因となったものでございます。

早坂委員

 次に、新銀行東京の設立に関して伺います。
 新銀行東京は、BNPパリバ信託銀行を買収して設立されましたが、新規設立でなく、買収という手法を選択した理由はなぜでしょうか。

〇中村産業労働局金融監理室長 

 新銀行の設立に当たりましては、準備会社を設立した後、新銀行として開業するか、既存の銀行を買収して開業するかの二つの選択肢がございました。一方、新銀行東京の設立を公表して以来、都議会の多くの会派から早期開業を求める声がございました。
 新銀行マスタープランによれば、買収という手法を選択した理由は、新銀行の経営の理念の実現に何ら支障がなく、新銀行の早期かつ確実な開業に最も適していると考えられるためとされてございます。

早坂委員

 ここまで当時の経済状況や新銀行マスタープランについてのおさらいをしてまいりました。
 確認のために伺いますが、新銀行設立に当たり、都議会ではこれまで伺った以外にどういった論点の議論がどのくらい行われてきたのかを伺います。

〇中村産業労働局金融監理室長 

 先ほどお答えした論点のほかに、地域金融機関との共存に関することや、既存の都の金融施策とのすみ分け、買収の経緯、中小企業の融資予定、リスクへの対応、ICカード事業などの内容などにつきまして、疑問や懸念が示され、議論が行われてきたところでございます。
 また、そうした疑問や懸念について検討すべく、新銀行構想発表後の平成十五年第二回定例会以降、買収に係る予算案が承認された平成十六年第一回定例会までに、本会議や予算特別委員会、常任委員会などで、延べ三十一日間にわたり、約五百問にも及ぶ質疑を行ったところでございます。

早坂委員

 このように、我が東京都議会では、多くの時間を費やし、さまざまな角度から新銀行東京の設立について議論を尽くした結果、新銀行への一千億円の出資を含む予算案に、自民党、民主党、公明党、生活者ネットが賛成し、議決したものであります。
 では、当時の政府や中小企業者、専門家などの新銀行設立に対する意見はどのようなものであったか、伺います。

〇中村産業労働局金融監理室長 

 まずは、政府につきましては、当時の経済財政・金融担当相は、平成十五年五月の段階で、あくまで一般論として申し上げれば、我々としてはこの銀行業界、金融業界を活性化させるような新規参入は、当然歓迎する立場にありますと発言してございます。中小企業団体からも、金融システム不安が進む中、貸し渋り、貸しはがしに苦しむ中小企業にとっては朗報とのコメントが発表されるなど、おおむね好意的な意見が多数を占めてございます。
 一方で、全国銀行協会などからは、損失が発生した場合の影響や、民業圧迫につながるといった懸念が示されておりました。

早坂委員

 こうした経過を経て、平成十六年四月に新銀行東京が設立されたわけでありますが、東京都が新銀行東京を設立した意義について改めて伺います。

〇中村産業労働局金融監理室長 

 新銀行マスタープランによれば、東京の地域経済を再生するためには、中小企業の潜在的な力を十分に発揮できる環境を整えることが必要であり、貸し渋り、貸しはがしに苦しむ中小零細企業に円滑に資金供給がなされなければならないという使命感から新銀行を設立したとされてございます。
 また、中小企業が置かれていた経営環境を見ると、既存銀行の体質改善や国の対応を待つ時間的余裕がなかった。都は、都民福祉の向上を図る責務を負っており、社会秩序を維持し、社会全体の危機を未然に防止するという観点からも、中小企業を総合的に支援する銀行を設立し、地域経済の活性化を実現していく必要があったとも述べられております。

早坂委員

 ただいまのご説明を伺うと、新銀行マスタープランに掲げられた内容は、策定当時としては妥当なものであったと考えられます。しかしながら、ご承知のとおり、開業後わずか二年という短期間で著しい経営悪化に陥りました。端的に、その原因は何だとお考えになるか、伺います。

〇中村産業労働局金融監理室長 

 ご指摘のとおり、新銀行マスタープランは当時としては妥当なものであったと認識してございます。しかし、不良債権を処理し、体力を回復した大手銀行などが、貸し渋り、貸しはがしといったそれまでの融資姿勢を一変させ、中小企業金融に積極的に参入してきたことにより、株式会社新銀行東京は、開業直後から非常に厳しい競争環境にさらされたところでございます。
 このように経営環境が変化する中で、新銀行マスタープランに掲げた内容が現実と乖離してきたところもあったと考えますが、銀行経営はあくまでも経営陣の責任において行うべきものであり、状況の変化に対して経営のかじ取りの変更がおくれたことが、新銀行東京の経営悪化の最大の原因であると考えております。当時の経営陣は、こうした状況の変化に対して速やかに対応すべきであったと考えます。

早坂委員

 経営悪化の責任はだれにあると考え、それをどのように追及しているのか、新銀行東京自身の取り組みについて伺います。

〇中村産業労働局金融監理室長 

 新銀行東京の経営悪化につきましては、外部調査報告書では、危機的デフォルトの発生状況に対して抜本的な対策を講じなかった旧経営陣に法的責任があるとされてございます。
 新銀行東京は、この外部調査報告書を踏まえ、慎重かつ周到に訴訟準備を進め、去る一月二十九日に、元代表執行役である仁司氏と元執行役である丹治氏に対して損害賠償請求を提起したところでございます。

早坂委員

 新銀行東京は、外部調査報告書に基づき、当時の経営陣に対して損害賠償請求訴訟を提起いたしましたが、これに関する東京都の見解を伺います。

〇中村産業労働局金融監理室長 

 経営悪化の原因と責任につきましては、まずは司法の場で明らかになることが重要だと考えてございます。都としては、裁判の行方を注視してまいります。

早坂委員

 当時の経済金融環境や、中小零細企業が置かれた苦しい状況にかんがみ、新銀行の構想は、中小企業団体や金融庁など多くの方々に歓迎されておりました。また、東京都議会でも議論を深められたと考えています。
 ちなみに、平成十六年第一回定例会の予算審議の最終討論において、民主党は、各会派の質疑を通じて多くの懸念が払拭された旨を述べていらっしゃいます。新銀行マスタープランは当時としては妥当なものと認識され、大多数の会派の賛成で新銀行が設立されたことは紛れもない事実であります。
 しかし、こうして設立された新銀行東京でありますが、現実にはうまくいかず、開業後わずか二年で経営悪化を招いてしまったことは、先ほど申し上げたとおりであります。我が党は、現に取引を行っている中小企業を初めとした都民の方々への影響が最小限となる方法を模索し、苦渋の選択として、新銀行東京へ四百億円もの追加出資に賛成をいたしました。
 経営悪化の原因と責任の究明については、当事者である新銀行東京が去る一月二十九日に、旧経営陣を相手取りみずから訴訟を提起したところであり、我が党はその裁判の動向を注視していかなければならないと考えています。
 次の質問に移ります。新銀行東京がこれまでその設立趣旨である中小企業支援に果たしてきた役割を確認したいと思います。
 新銀行東京は、開業以来、その設立目的である中小企業支援をどれくらい行ってきたのか、伺います。

〇中村産業労働局金融監理室長 

 新銀行東京は、平成二十一年九月末時点で、他の金融機関では支援が難しい赤字、債務超過先を多数含む、延べ約一万八千社の中小零細企業に対して支援を行ってきたところでございます。また、現在でも約九千社の中小零細企業との取引を継続しているところでございます。

早坂委員

 では、今お答えのあった、他の金融機関では支援が難しい赤字、債務超過先に対する支援の状況について伺います。あわせて、現在取引のある九千社の内訳についても伺います。

〇中村産業労働局金融監理室長 

 新銀行東京では、同じく平成二十一年九月末時点で、四千二百六十三社の赤字、債務超過先に対し、二百七十一億円の支援を行っております。また、平成二十一年九月末時点において取引を継続している八千六百八十四社のうち、売上高五億円未満の中小零細企業が、件数で約八三%、残高では約四八%を占めております。

早坂委員

 ところで、新銀行東京は従来から、国の政策を先取りする形で、長引く不況で資金繰りに窮している中小企業に対し、一定の返済猶予であるリスケジュールを積極的に行っていると承知をしておりますが、その実績について伺います。

〇中村産業労働局金融監理室長 

 一般にリスケジュールとは、銀行と取引先との合意の上、貸出金の返済期間を当初の契約より延長することをいいますが、新銀行東京では、与信期間の延長、返済金額の減額、約定金利の引き下げなど、融資条件の緩和を取引先の実情に応じてきめ細かく行っているところでございます。
 新銀行東京は、平成二十一年九月末時点で千二百五十件、九十三億円のリスケジュールを実施中であり、残高全体に占める割合は、それぞれ件数で一四・三%、金額で一二・五%となっております。また、開業以来の累計では、千六百二十件に対し百四十億円のリスケジュールを実施しており、そのうち、平成二十年度以降の実施分は千二百四十四件、百二億円となってございます。
 こうした取り組みの中で、景気低迷の影響を受け経営が悪化した販売業者に対して、新銀行が社長を激励し、リスケジュールを実行したところ、今後とも新銀行との取引を継続していきたいと感謝された例や、別の販売業者では、社長の話をじっくり聞き、今後の資金相談等を行ったところ、新銀行の真摯な対応に感動し、今後も末永い取引をお願いしたい旨のお言葉をいただいたなど、支援を受けた取引先の中小零細企業から多くの感謝の声が寄せられていると聞いてございます。
 なお、新銀行東京は、取引先に対し、経営悪化の原因を伺った上で、経営改善など対応策の相談に応じ、時には店舗の廃止などのリストラを勧め、リスケジュールに応じており、再生の見込みがない企業の単なる延命のために行うものではございません。

早坂委員

 繰り返しになりますが、我が党は、新銀行東京の経営が行き詰まる状況下で、平成二十年第一回定例会において、現に取引を行っている中小零細企業の方々への影響が最小限になる方法を模索し、苦渋の選択として追加出資に賛成をいたしました。現在も新銀行東京は、他の金融機関では支援が難しい赤字、債務超過先企業を初め、多くの中小零細企業を支援してきており、再建途上ではあるものの、現在でも九千社の中小零細企業を支援しているとのことでありました。長引く不況に苦しむ中小零細企業を支えていくため、あらゆる支援ツールを総動員していかなければならない現在、新銀行東京もそうした東京都の中小企業支援の一翼を担っていることは間違いありません。
 こうした中小企業支援を行っている民間の金融機関である新銀行東京に対して、東京都は早期撤退すべきだとか清算すべきといった無責任な主張があります。そこで伺いますが、今、東京都が新銀行東京から撤退したり、新銀行東京を清算した場合、どのような影響があるのか。先日の四百億円の追加出資がどのような効果をもたらしたかも含め、局長の考えを伺います。

〇前田産業労働局長 

 まず、先ほどご質問いただきましたように、多くの方々の期待を担って発足した新銀行東京が、開業後わずかにして著しい経営悪化に陥りましたことについては、まことに遺憾であります。
 そうした中で、新銀行東京は銀行でありますから、多数の取引先、預金者がございます。東京都は、経営悪化に陥った新銀行について、取引先、預金者の保護及び悪影響を回避するため、新銀行東京を再建し、中小企業支援を継続するということで、まさに先生おっしゃられました苦渋の選択ではありましたが、四百億円の追加出資を行ったところでございます。
 新銀行東京は、新しい経営陣のもとで懸命に再建を進めておりまして、今年度の中間決算が、開業後初めて黒字になるというような成果がございます。つまり、四百億円の追加出資により、新銀行東京はその銀行業務を継続することができ、また、懸命な努力によって再建を、まだまだ道半ばではございますが、着実に進めることができたということはいえると思います。
 新銀行東京は、現在も二千億円を超える預金を有しますとともに、先ほど金融監理室長から答弁申し上げましたように、他の金融機関では支援が難しい赤字、債務超過先を含む約九千社の中小零細企業を支援しておりまして、そこで働く従業員の方々、その家族の方々を含めますと、十万人以上の関係者が存在いたします。
 経営再建に向けた新銀行東京の懸命の努力により、ようやく黒字化を果たしたとはいえ、いまだ再建途上にある現時点で、仮に東京都が新銀行東京から撤退するということになれば、新銀行東京は経営を継続できなくなります。多くの預金者や貸出先である中小零細企業、そして都民の方々に重大な影響を及ぼすことになると考えます。
 特に現在の取引先九千社のうち千二百五十社は、新銀行のリスケジュール対応により返済負担が軽減され、事業継続、経営改善に取り組んでいる企業でございます。そうした企業の唯一のよりどころである新銀行東京がなくなってしまうということは、厳しい経営環境の中で歯を食いしばり、懸命に努力している中小零細企業の生命線を絶つことになりかねません。
 また、再建途上ということで、当然ながら東京都が追加出資した四百億円は保全されないものと考えております。つまり、現時点で東京都が新銀行東京から撤退をするということになれば、新銀行東京は存続し得なくなる、また、四百億円は保全されない、そして取引先等に多大な影響が出ると、こういうふうに考えます。
 したがいまして、東京都といたしましては、今行うべきことは新銀行東京の再建を第一に進めることだと、こう考えておりまして、銀行自身も懸命に努力しておりますが、東京都としても、その再建に向けて全力で取り組んでまいります。

早坂委員

 現在の百年に一度といわれる厳しい経済状況の中、こうした新銀行東京を含めた中小企業支援の全体の施策について東京都はどのように考えているのか、改めて伺います。

〇前田産業労働局長 

 中小企業は、東京の経済、雇用を支えます基盤でございまして、東京都といたしましても、商工、金融、雇用など、多岐にわたって中小企業支援を行っているところでございます。
 中小企業につきましては多数の企業が存在いたしまして、そのニーズや課題は、資金繰り、経営支援の解決や販路開拓に向けた取り組みなどの経営安定化支援、人材育成、技術支援など多岐にわたってございます。その時々の経済状況に応じながらも、そうしたさまざまなニーズや課題にこたえるべく、常に多様な支援ツールを準備し、実施していくことが重要だと考えております。ましてや、委員ご指摘のように、現在の厳しい経済状況の中では、さまざまな選択肢、支援ツールというものを用意していくことが特に求められていると思います。
 その中で新銀行東京は、再建中でありますから、十全な活動というのはちょっと難しいところがありますが、東京の産業を支える中小企業への支援ツールの一つとして役割を担っているということは紛れもない事実でございます。都としては、新銀行東京がその設立理念を再び十分に果たせるよう、再建に全力を注いでまいります。

早坂委員

 本日は、新銀行東京の設立に至るまでの経緯と、今日も担っている中小企業支援の役割を中心にお伺いをいたしました。
 経営悪化の責任については、まずは司法の場にゆだねるべきであるとともに、新銀行東京の現在の経営状況などについては、これまでどおり経済・港湾委員会で議論すべきであると考えております。
 最後に、東京の中小企業支援施策全体の観点からも、新銀行東京の再建にしっかりと取り組んでいただきたいと思います。