2009.11.16 :平成20年度公営企業会計決算特別委員会
「築地市場移転」

早坂委員 

 次に、中央卸売市場事業について伺います。
 我が党は、将来にわたり都民の食生活を支える新市場の安全性を確保する観点から、予定地の土壌汚染の問題に真摯に取り組み、本会議や委員会での質疑を通じ、安全性について詳細に確認してまいりました。
 土壌汚染の状況については、敷地全域にわたる詳細調査と、これに引き続き、昨年度から本年度にかけて行われた深さ方向の調査の結果により、汚染範囲は限定的であり、敷地全体に汚染が広がっていないことが明らかになっています。
 また、東京都の土壌汚染対策は、日本有数の科学者により構成された専門家会議と技術会議において、科学的知見に基づく多角的な検証を重ね、安全・安心のレベルをより一層高めた、極めて信頼性の高いものです。さらに、施設完成後も、地下水のモニタリングができるようにするなど、土壌汚染対策法の改正により、新市場予定地が新たに法の対象となることも視野に入れられており、この対策を確実に実施することで、新市場予定地の安全を揺るぎないものにすることができると確信をしております。
 新市場予定地は、現行の土壌汚染対策法施行以前にガス工場が廃止されていることから、法の対象外となっていますが、民主党は、法と同等以上の調査を求めていました。
 そこで、東京都が行った調査は、法と比べ同等以上のものであったのかどうか、伺います。

〇岡田中央卸売市場長

 現行の土壌汚染対策法で求められる調査でございますが、まず、調査区画につきましては、土地の利用状況及び有害物質の使用状況などを踏まえまして、汚染のおそれがない区域を除き、汚染のおそれの大小によりまして、十メートル、あるいは三十メートルに設定いたします。
 次に、調査手法についてですが、ベンゼンなどの揮発性物質について、地表近くの土壌ガス、あるいは地下水を分析し、その結果、基準を超えた場合には、深さ方向に土壌ボーリング調査を行います。また、シアン化合物及び重金属につきましては、地表近くの土壌を分析することとされております。
 これに対しまして、専門家会議の提言に基づき行った調査は、汚染の全容を的確に把握し、汚染状況に応じた土壌汚染対策を策定するため、土地の利用状況などにかかわらず、敷地全域を十メートルメッシュに区分した上で、東京ガス株式会社の操業に由来する汚染物質すべてについて、操業時の地盤面近くの土壌を採取するとともに、汚染物質が、程度の差はあれ地下水に溶け出すことから、地下水もあわせて採取し、分析してございます。これら調査の結果、土壌または地下水で環境基準を超えた場合に、土壌ボーリング調査を実施いたしました。
 このように、都が行った調査は、土壌汚染対策法で求められている調査に加えまして、地下水を採取、分析するなど、都市ガス製造に起因する汚染物質の特性を十分考慮したもので、土壌汚染対策法の調査に比べ、より手厚いものとなってございます。

早坂委員 

 新市場予定地の土壌汚染対策についても、民主党は、現行法が定める指定区域の解除要件を満たす対策を講じることを求めてきました。
 そこで、東京都の対策は指定区域が解除できる内容であるのか、また、大規模な土地の改変を行うことから、新市場予定地は改正法の対象になるものと承知をしておりますが、あわせて改正法への対応についても伺います。

〇岡田中央卸売市場長

 現行の土壌汚染対策法が定めます指定区域の解除要件は、土壌中の操業に由来する汚染物質を除去した後、地下水を一年に四回以上、定期的に採取、分析し、二年間継続して環境基準以下であることとされております。
 豊洲新市場予定地の土壌汚染対策につきましては、操業に由来する汚染物質は、深さにかかわらずすべて除去するとともに、地下水につきましても、敷地全面にわたって、市場施設の着工までに環境基準以下に浄化することとしております。こうした対策の後、地下水を二年間、毎月採取、分析し、浄化されていることを確認することから、指定区域の解除は十分可能でございます。
 改正された土壌汚染対策法につきましては、解除要件が汚染物質の除去であることに変化はなく、地下水の採取、分析の頻度、モニタリングの期間など、具体的な技術基準を定める省令は現時点で公布されていませんが、都の対策は、汚染物質を徹底して除去、浄化した上で、地下水を毎月分析するなど、現行法の解除要件を上回る措置をとることとしており、対応可能であると考えてございます。

早坂委員 

 現行法では、覆土を行うだけで建物は建てられると理解しておりますが、東京都の対策は極めて手厚く、さきの答弁にもありましたように、調査も含め、法が求める要件を十分に満たすものです。
 また、民主党は、液状化対策のための地盤改良工事に万全を期することも求めていましたが、新市場予定地では、阪神・淡路大震災でも実績が確認されている方法が採用されています。それでも、新市場予定地は安全性が確認されていないと、ご主張になるのでしょうか。もし疑義があるならば、本会議や常任委員会の場で、はっきりと根拠を示すべきであります。いたずらに都民の不安をあおり立てるような無責任な姿勢には、自民党を代表して憤りを感じます。
 先般の本委員会分科会において、卸売市場の安全性について、さまざまな角度から質疑が行われました。これらの質疑を通じ、耐震性やアスベスト対策に課題を抱え、交通事故件数も他市場に比べ極めて多いという、築地市場の問題点が浮き彫りとなっています。
 また、築地は、品質衛生管理や物流の面でも課題が山積みになっており、一刻も早い対応が必要ですが、狭隘な敷地で営業を継続しながら抜本的な施設改善を行うことは、現実的に不可能であることは明白です。築地の業界は、こうした状況を踏まえ、二十年もの長い年月をかけ検討を重ね、豊洲移転という結論に達しております。
 現在地再整備の検討を主張する民主党のある都議会議員は、業界誌のインタビューの中で、大切なのは市場の中のコンセンサスのとり方と発言されておりますが、そういう意味では、豊洲移転こそが、まさしく築地における市場の中のコンセンサスであります。こうした移転決定に至る経緯を無視し、改めて再整備を検討するということは、業界のコンセンサスをないがしろにする行為で、到底業界の理解を得られるものではないと考えます。
 東京都のご見解を伺います。

〇岡田中央卸売市場長

 築地市場の豊洲地区への移転につきましては、現在、六つの業界団体の中で五団体が希望しております。残り水産仲卸組合も、移転の可否について組合内の意見が拮抗してございます。
 こうした状況の中、昨年五月に業界団体の大多数から、計画推進の要望書、さらに、本年七月の都議選後にも、卸、仲卸業者、関連事業者、買い出し人などから、計画推進の嘆願書が提出されてございます。これらの要望書、嘆願書におきましては、現在地再整備につきましては、営業を継続しながらの工事の困難性や将来の発展の余地が確保できないなど、多くの問題を抱え、とんざした苦い経験があり、不可能といわざるを得ない。再整備は不可能であるとの結論に至り、苦渋の選択として移転を決定したと述べられております。
 このように、市場業者の多くは、過去に真摯に取り組んだ現在地再整備がとんざしたのを目の当たりにし、市場の将来を考え、移転整備を切実に望んでいることから、改めて再整備を検討することにつきましては、業界の納得は到底得られないものと考えております。

早坂委員

 新市場の整備に当たっては、実際に築地市場を利用する事業者や、市場流通に精通する専門家などの意見を計画に反映させ、よりよい施設にしていく必要があります。 そこで、豊洲への移転決定や新市場の施設計画策定に当たり、どのように市場関係者や外部の識者などの意見を取り入れてきたのか、伺います。

〇岡田中央卸売市場長

 豊洲地区への移転は、都と市場業界の協議調整機関であります築地市場再整備推進協議会におきまして、さまざまな検討が行われ、最終的に、現在地再整備は困難であるとして、平成十一年に移転整備へと意見集約をしたものでございます。
 この結果を受け、学識経験者、都議会議員、業界代表、区市長と消費者代表で構成いたします東京都卸売市場審議会において審議が行われ、平成十三年四月に、早急に豊洲地区を候補地として移転整備に向けた検討を進めるべきとの答申がまとめられ、都は、この答申を受けまして、豊洲地区への移転を決定したものでございます。移転決定後、新市場の基本構想、基本計画の策定におきまして、業界と学識経験者による意見交換や、流通や衛生管理等の専門家へのヒアリングを行い、その意見を参考にするとともに、施設計画の具体化に当たりましては、新市場建設協議会及びその下に設置いたしました懇談会等において業界と協議を重ね、その要望を計画に反映してございます。
 このように、豊洲地区への移転及び新市場の施設計画は、市場業界や学識経験者などの意見を踏まえ決定したものでございます。

早坂委員 

 昨今、築地市場には国内外から多くの観光客が訪れ、まるで観光目的の施設であるかのごとくの議論も聞かれますが、あくまで築地は市場業者がプロの買い出し人を相手に商売を行う業務施設であります。新市場においては、新鮮で安全な商品の品ぞろえや、スムーズな買い出しを望む利用者の期待にこたえられる機能を備えていくことが必要です。
 新しく就任した農林水産大臣は、食の安全や安定供給などの観点から、全国的に中央卸売市場を機能強化していく考えを示しています。生鮮食料品流通が大きく変化し、市場外流通が増加する中、市場機能の強化は東京都の中央卸売市場に共通に課せられた使命といえます。
 そこで、中央卸売市場における機能強化の必要性について、どのように認識しているのか、伺います。

〇岡田中央卸売市場長

 近年、卸売市場を取り巻く環境は、物流の効率化、食の安全・安心に対する意識の高まりや食生活の多様化など、大きく変化してございます。
 卸売市場を利用する出荷者や買い出し人などは、大量で多品目の商品を効率的に搬入し、仕分けして搬出するため、場内物流の効率化を求めてございます。また、消費者におきましては、食の安全・安心に対する意識が高まっていることから、その期待にこたえるため、市場内での品質管理、衛生対策を徹底することが必要であります。さらに、ホテルや飲食店等の外食産業、総菜や弁当等などを扱います中食産業などの事業者が必要といたします小分けや加工といった業務需要に対応することが求められています。
 このため都は、今後、迅速な搬入搬出を可能といたします荷さばきスペースの確保や、品質管理高度化のためのコールドチェーンの確立や、消費者が安心できます衛生対策の強化など、卸売市場の機能強化に取り組むことが重要であると認識してございます。

〇樺山委員長 

 振鈴が二つ鳴りましたので、早坂副委員長の発言は終わりました。