2008.10.20 : 平成19年度各会計決算特別委員会第1分科会(第3号) 本文
「都市外交」

早坂委員

 ところで、かつて東京都は、ニューヨークとパリに海外事務所を設けていました。平成十二年三月をもって閉鎖されましたが、年間にニューヨークは一億円、パリは七千万円のコストがかかっていました。その金額が多いか少ないかについては議論が分かれるところだと思いますが、今日では、旧自治省が主体の自治体国際化協会に対して東京都が人を派遣し、世界七都市にある自治体国際化協会の海外事務所にかつての役割を求めているようです。
 海外に出るのに、自治体が寄り集まって一緒に固まっているというのは、率直にいって、自治体の雄たる東京都らしいやり方とは思えません。海外事務所に人を出すというやり方もありますが、例えばニューヨーク市役所やその他の団体に、二、三年、スタッフとして人を出す、あるいはそこから人を受け入れるというやり方もあると思います。ニューヨークやパリとの間では、かつてそういった形で職員を派遣していた時代もあります。海外事務所の勤務であれば、どうしてもそこで勤務する日本人同士の会話や交流が多くなりがちになり、すなわち、いつも顔は日本を向いていることになってしまいます。そうではなくて、現地で朝から晩まで、その都市の皆さんと一緒になって働くことで得られる知見あるいは人間関係には格別のものがあろうかと思います。
 お客さん扱いで、何をしてもらうか、受け入れ先が困るといった心配もあるようですが、それは派遣される人の能力によります。例えば世界一安全な東京都水道局の技術者は、どの都市からも引く手あまたでしょう。
 かつて明治四年、右大臣岩倉具視を中心に、大蔵卿大久保利通や工部大輔伊藤博文など明治新政府の中核メンバー百七人が、実に一年間にわたり欧米視察の旅に出ました。政府が丸ごと海外に出てしまったのであります。その間、国に残った政府は留守政府と呼ばれていました。その岩倉使節団が帰国後、日本の国づくりに大きな役割を果たしたのはいうまでもありません。
 今日、東京都は、二〇一六年、東京オリンピックの招致を目指しています。世界都市東京が学ぶべきものは、国内諸都市からももちろんあるでしょうが、それ以上に、パリ、ロンドン、ニューヨークあるいは北京、ソウルなど、世界の大都市にあると考えます。一方で、地球環境対策に代表される東京の持つさまざまな都市経営の技術を海外の諸都市にも共有してもらうことが、世界全体の発展につながることでしょう。そのためには、地道な行政職員レベルの交流と、政策決定者レベルの交流のどちらもが重要であると考えます。
 東京都は、今後の都市外交をどのように展開しようと考えているのか、ご見解を伺います。

◯吉川知事本局長

 今、早坂先生からロンドンという話もありましたので、今思い出していたんですけれども、私、ことしの一月二十四日だったですけれども、ダボスへ行ってまいりました。ちょうど、前ロンドン市長だったリビングストン市長さんと同じセッションに入りまして、今先生のお話を伺っていて、ごく短時間ですけれども、ロンドンで地球温暖化対策についてトップリーダーを発揮しているリビングストン前市長と話をしてみまして、いかに、逆な意味でいうと、東京都が今──私、前環境局長だったのでいうわけじゃないんですが、期待されているか、日本ではなくて東京がリーダーシップを発揮していくことが大事なんだというか、そんなことを体で知ってきました。
 そういう意味で、先生のお尋ねの、東京都として今後都市外交をどのように展開していくんだというようなことですが、僕は、いろんな機会をとらえて、積極的に東京都の職員一人一人が、直接外国に行けなくても、いろんな機会を通じて、そうやって他から学び、もしくは日本の培ってきた実力を他の都市に貢献できるかどうか実践していくということが極めて大事だなというような感想を抱きつつ、都市外交について答弁させていただきますが、グローバル化が進む中で、さまざまな行政課題が最も先鋭的にあらわれる世界の大都市、これは先生がおっしゃったとおり、ニューヨークであれ、ロンドンであれ、パリであれ、東京都等々が連携協力して課題解決に取り組むことが本当に求められていると思います。
 このため、東京都においては、政策目的実現に即した実効性のある海外との交流を積極的に進めてまいりました。具体的には、先ほどご質問のあったアジア大都市ネットワーク21、それから観光振興を目的とするシティーセールス、海外企業誘致セミナーなど、多角的な事業を行ってまいりました。
 既にご案内だと思いますが、今週の水曜日から三日間、初めてC40気候変動東京会議で適応策、気候変動対策では緩和策だけではなくて適応策も極めて重要ですが、その適応策についての実務者が集まりまして、地球温暖化対策について討論をしてまいります。これらを通じて、先ほどの出だしの言葉じゃないんですが、私は、外交というのは、結果的には東京の安定的な継続的な繁栄、これにいかに寄与するか、一方では、東京の培ってきたノウハウで、その同じ場に参画していただける諸都市に対してどうやって貢献できるか、この獲得と貢献というんでしょうか、そういったことをきちっと肝に銘じて進めていくことが大事だというふうに思っております。
 こうした事業に都庁の多くの職員が携わることによりまして、個々の職員の政策能力、国際感覚が培われていくものと認識しております。さらに、そのすそ野を広げるために、今年度から職員の海外研修、これを再開いたしましたが、国際関係業務を担う能力を備えた職員の育成にも取り組んでまいりたいと思っております。
 いずれにしましても、今後とも各局と連携しながら、東京の持てる力を最大限に活用し、世界の都市と知恵や経験を分かち合い、都市間の課題解決につながる都市外交を積極的に展開してまいります。

早坂委員

 知識の獲得と貢献という双方向だというお話をいただきました。極めて私ごとですが、私、小学校の卒業のときに、外交官になりたいという夢を持っておりまして、今日、その夢を果たしたか、果たしてないか、東京都議会議員としての仕事に邁進しております。今、吉川局長のお話を伺い、大変心強く思いました。あくまで東京都らしい都市外交をともに展開してまいりたいと思います。
 以上です。