2005.10.23 : 平成17年度_公営企業会計決算特別委員会第1分科会(第2号) 本文
「都営地下鉄の安全管理」

早坂委員 

 先日の交通局の決算概要の説明では、平成十六年度を初年度とする三カ年の東京都交通局経営計画チャレンジ二〇〇四を策定し、計画の達成に向けて取り組んでいるとのお話がありました。
 東京都では、安全・安心の確保を重要施策としていますが、交通局の経営計画においても、公共交通機関としての安全管理、危機管理の強化を重点課題としています。
 この点に関して、都営地下鉄の取り組みを中心に、何点かお伺いをいたします。
 昨年四月のJR福知山線の車両転覆事故などを契機として、昨今、公共交通機関の安全性に社会的な関心が高まっています。都営交通も、六月に発生した都電荒川線の車両追突事故を教訓に、安全対策の強化に取り組んでいると伺っています。
 また、事故だけでなく、地震などの災害や火災、テロなどを含めて、鉄道事業者として安全管理、危機管理の強化が利用者から要請されている状況にあります。
 安全な都営交通を実現するため、厳しい財政上の制約などの中にあっても、安全確保には優先して投資を行い、先進的な取り組みを行っていただきたいと思います。
 そこで、まず最初に、平成十七年度において、安全の確保に向け、地下鉄事業として特にどのようなことに重点的に取り組んできたのか、お伺いいたします。

◯高根参事 

 平成十七年度の安全対策といたしまして、浅草線のATS改良による運転保安設備の向上や駅排煙設備の整備などの火災対策など、ハード面における安全対策を積極的に進めてまいりました。
 また、駅施設などにおける日常的な警備を強化するとともに、不測の事故、災害等に備え、異常時総合訓練や防災訓練、テロ対処訓練などの各種訓練を警察、消防と合同で実施するなど、安全管理、危機管理の対応を図ったところでございます。

早坂委員 

 ただいまのご答弁で、浅草線の自動列車停止装置ATSを改良するとありましたが、福知山線の脱線事故を教訓に、速度超過を防止し、制限速度以下に列車を制御する装置の整備が喫緊に求められているところであります。機器を整備すればすべてが解決するわけではありませんが、安全性を確実に高める上で設備の機能強化は不可欠であります。
 都営地下鉄では、自動列車制御装置ATCが設置されていない浅草線について、国が問題とする急カーブはないようですが、現在の自動列車停止装置であるC-ATSの整備状況と今後の見通しについてお伺いいたします。

◯室木車両電気部長 

 都営地下鉄の三田線、新宿線及び大江戸線の三路線では、カーブ等で自動的に速度制御を行う自動列車制御装置ATCを導入し、安全を確保してまいりました。
 建設時期が古い浅草線につきましては、自動列車停止装置ATSにより安全の確保を図ってまいりましたが、さらに安全性を向上させるため、相互直通運転を行っている京浜急行電鉄、京成電鉄及び北総鉄道の各社と共同で新型のATSに切りかえ、ATCとほぼ同等の速度制御を行うことといたしました。
 その整備状況でございますが、平成十八年度末までに新型ATSを一部先行して導入し、車両の最高速度を自動的に制限いたします。
 さらに、今後、平成二十二年度末までに、全線にわたって新型ATSを導入いたします。
 これにより、ATCとほぼ同等の速度制御を行い、安全性をさらに向上させてまいります。

早坂委員 

 安全の確保については、設備面での対応を図るとともに、機器の運用を含め、日常の安全管理が適正に行われているか、厳しく検証することが重要だと考えます。国では、法律を改正して、この十月から安全マネジメント態勢を構築する仕組みを導入し、公共交通事業者が、経営トップから現場まで一体となって、安全意識の浸透や安全風土の確立を目指すこととしています。
 そこで、交通局では、安全マネジメント態勢の確立のために、具体的にどのような対応を行っているのか、お伺いをいたします。

◯高根参事 

 局におきましては、安全確保のための運営方針、その管理体制などを定めた管理規程を作成し、また、輸送の安全業務を統括する安全統括管理者を選任するなど、体制の整備を図ったところでございます。
 今後は、安全に関する方針を立て、それを実行し、チェックして改善を図る、いわゆる安全マネジメントシステムを適切に機能させてまいります。
 また、このシステムのもとで規程の遵守を徹底し、情報の共有化を図るとともに、安全・安心な車両、設備などの提供に努め、さらなる安全を確保してまいります。

早坂委員 

 安全管理や危機管理の体制の充実に加え、実際に事故や災害が発生した場合に、鉄道事業者としてどのような対応力を持っているかも重要なテーマだと思います。
 例えば、去る九月二十八日にJR京葉線で火災が発生して、二十万人を超える利用者の足に影響が出ましたが、こうした場合の乗りかえコースの案内なども含めて、利用者に対してどのようなサポートを行うことができるかという視点も必要です。特に最近では、インターネットの普及によって、利用者は事故に関する情報の速やかな発信を求めていると思います。旅客サービスという点からも、そうした利用者のニーズに的確にこたえていくことが重要なことであると思います。
 都営地下鉄として事故発生時の情報提供などを的確に行うため、具体的にどのような取り組みを進めているか、お伺いをいたします。

◯佐藤電車部長 

 交通、鉄道事業者としまして、都営地下鉄を利用されるお客様に対しまして、事故や災害が発生した場合に正確な情報を迅速に提供することは極めて重要であると認識をいたしてございます。
 このため、交通局では、事故時等の列車の運行状況をお客様に速やかに伝えるため、駅構内放送や車内放送を確実に実施するとともに、ホームページや携帯電話から運行に係る情報を入手できる仕組みの充実にも取り組んでまいりました。
 平成十六年度には、列車運行情報表示装置の開発に着手し、駅の改札口付近に四十インチの巨大な液晶モニターで情報を表示する機器の整備も進めております。
 平成十七年度までに、大江戸線、新宿線の各駅に八十四台の設置を行いまして、十八年度には浅草線と三田線の全駅につきましても設置を完了する予定となっております。
 交通局としまして、こうした情報提供の機能を高めまして、お客様にとって安全で安心できる都営地下鉄の実現に向けまして全力を尽くしてまいります。

早坂委員 

 安全の確保には完璧というものがありません。絶えず安全管理のレベルアップに取り組んでいくことが必要であります。常日ごろから厳しい姿勢でみずからの事業運営のあり方を検証し、安全の確保に努めていただくことをお願いをいたします。
 都営交通の安全・安心に向けた局長の決意をお伺いいたします。

◯松澤交通局長 

 都営地下鉄やバス事業を運営する私ども交通事業者にとりまして、お客様への安全の確保、また危機管理の徹底は、サービスの基本でございまして、最大の使命でございます。
 委員から先ほどお話がありましたように、昨年四月のJR福知山線事故以降、テロ、災害などを含めまして、お客様の安全に対する社会的な要請はこれまで以上に高まってきております。
 加えまして、ことしに入って六月に私どもが引き起こしました都電荒川線の事故などを踏まえ、これらを教訓としまして、これまで以上に安全・安心の確保に積極的に取り組んでいかねばならない、このように思っております。
 このため、ただいま各部長が答弁しましたように、ハード、ソフト両面から、今後、各種の安全対策を検証しながら、重点的に推進するとともに、十月から施行となりました新たな安全マネジメント態勢を適切かつ迅速に実施してまいります。
 とりわけ事故防止につきましては、ハインリッヒの法則でいわれておりますように、大きな事故の前には、その背景として、日常的な多くのヒヤリ・ハットが必ずあるわけでございまして、日ごろからの事故の芽を摘むためには、ヒューマンエラー防止のための取り組みをあわせて確実に実施することが不可欠と考えております。
 今後とも、安全最優先の都営交通を目指しまして、局一丸となって全力を挙げて取り組んでいく決意でございます。