2006.09.29 : 平成18年厚生委員会 本文「PFI(多摩広域基幹病院・小児総合医療センター)」

早坂委員 

 多摩広域基幹病院及び小児総合医療センターの整備に係る契約についてお伺いいたします。
 この事業は、都立病院としては初めてPFI手法を導入して整備するものであり、病院施設の設計、建設だけでなく、十五年に及ぶ運営期間の建物清掃や設備管理業務、医療事務、給食など、関連サービス業務といったさまざまなサービスの提供も含めた、我が国でも有数のPFI事業となっています。
 我が党はこれまでも、この事業の重要性にかんがみ、PFI手法の導入や事業者の選定方法などについて確認を行うとともに、医療環境の変化に適切に対応しながら、病院機能を維持することはもちろんのこと、将来にわたって都民の期待にこたえ得るような高い水準の病院を実現していくよう、意見、要望を重ねてまいりました。先日の委員会で、ようやくこの事業を実施するために設立された特別目的会社と事業契約を締結したと報告がありました。
 まず、確認の意味も含めまして、PFIの契約と従来の工事請負契約や業務委託契約との違いについてお伺いいたします。

◯及川経営企画部長 

 従来の工事請負契約や業務委託契約は、分離分割発注して工種ごとに、あるいは委託業務ごとに、それぞれ個別に契約を締結しておりました。
 本件PFI事業契約は、設計、建設から施設の維持管理、運営業務に至るまで、業務を包括しまして、本事業を実施する目的で設立されました民間事業者に行わせるという契約でございます。
 また、従来の契約では、都が仕様を定め、その仕様に基づいて工事や業務運営を行うように求めてまいりました。
 今回、性能発注であるPFI事業では、事業者は、都との協議を交えながら、都が示しました要求水準を満足するように、サービス提供のための業務設計や施設設計を行いまして、事業者が具体的な仕様を定め、実施していくものでございます。
 都といたしましては、これらの業務設計や施設設計が要求水準を満足するものかどうかということを、この事業契約の定めに従いまして確認していくということになります。

早坂委員 

 提出された委員会資料によれば、薬品費や委託料などについては、運営に要する経費として個別の内訳がありませんが、なぜこのような契約になるのか、さらに詳細な内訳を示すことができないのか、お願いいたします。

◯及川経営企画部長 

 契約書に定めました内訳につきましては、委員会資料のとおりでございまして、これをさらに詳細な内訳を示すということはなかなか難しいというふうに考えております。
 その理由といたしまして、このPFIの事業契約につきましては、建物の設計、施工から運営、維持管理に至りますまで、さまざまな業務を包括して事業者に行わせ、都がそのサービスの対価を支払うということを内容といたします、いわゆる総価契約でございます。業務ごとの内訳金額を固定せずに、適宜変動が可能となる構造としております。
 また、この内容の変動が可能な構造としましたのは、都が示しました要求水準等の業務レベルを達成するために各業務にどれだけの費用をかけるか、どの協力企業を選定するかといった業務設計や遂行方法などが、基本的に特別目的会社、SPCと呼ばれているものですが、この会社の創意工夫に任されておりまして、さらに、医療環境の変化や技術革新などに応じまして絶えず見直しを行い、複数業務を最適に編成し直していくためでございます。
 こうした状況の中で契約の内訳を明らかにするということは、事業者の競争上の地位にも支障を与えかねないというように考えているためでございます。

早坂委員

 確かにPFI事業の契約は総価契約でありますし、東京都が示した要求を満たす、あるいはより質の高いサービスの提供方法を、事業者の創意工夫により、費用も含めて考えるのであれば、内訳金額の多くが規定されていないことはやむを得ないことだと思います。
 しかしながら、これだけ多額の費用を要する契約であるのですから、東京都として特定目的会社による費用の見積もりを把握し、適正であるかの判断を行うことが重要であると考えます。
 費用の積算や協力企業の選定などは事業者の創意工夫に任されているとのことでありますが、今回契約するに当たり、特定目的会社による何らかの費用の目安、いわば見積もりを把握していることと思います。その見積もりはどのようになっているか、不利益が生じないよう、可能な範囲でご答弁をいただければと思います。

◯及川経営企画部長 

 あくまで現時点で、この特別目的会社、SPCが想定しているという考え方、そういった前提であえて申し上げるとすれば、医薬品や診療材料等の調達に要する費用は一千三十億円程度、光熱水費は百三十億円程度、それから委託費等は八百二十億円程度、このような数字になっております。

早坂委員 

 確かに事業者の創意工夫、ノウハウでありますから、目安とはいえ、大枠での見積もりしか示せないことはよくわかります。ただし、事業者の業務設計や見積もり費用などの計画については、東京都においてしっかり精査し、ぜひ適切な業務運営に努めていただくよう、お願いいたします。
 ところで、費用の把握も含めて、今後は事業者からより質の高いサービスの提供を受け、それを維持していくことが重要となります。この費用の把握とサービスの提供の関係は表裏一体の関係であり、そのためには東京都が事業者の業務をチェックする、いわゆるモニタリングを適切に行っていくことが必要であります。
 そこで、東京都が示した要求水準を満たすことはもちろん、事業者からより質の高いサービス提供を受けるためのモニタリングについてどのように取り組んでいくか、お伺いいたします。

◯及川経営企画部長 

 業務運営に当たってのモニタリングにつきましては、都において基本計画を定めまして、都と事業者が協議をし、モニタリングの方法や項目、あるいは具体的な測定の指標を定めた実施計画を策定いたします。
 モニタリングによりまして、要求水準が維持されていないといったことなどが確認された場合には、SPCに対しまして、業務の改善、復旧などを行うよう指導することとしております。
 また、必要に応じましてSPCへ業務改善勧告を行いますとともに、サービスに対する対価の支払いを留保、減額するなど、確実かつ良質なサービスの提供を確保する仕組みとしてまいります。

早坂委員

 この病院PFI事業の成否は、東京都によるモニタリングにかかっていると思います。ぜひ質の高いサービスが提供され、ひいては患者さんに対するサービスの向上につながるよう、要望をいたします。
 次に、計画病床数の変更について何点かお伺いいたします。
 我が党は、本年の第一回定例会における代表質問で、当時の野村幹事長が、産科医師減少という厳しい医療環境を踏まえ、二病院を一体的に整備するメリットを生かし、より効率的な産科体制づくりを目指すべきだと指摘いたしました。
 今回の病床数の変更は、我が党の提言を踏まえ、小児総合医療センターに整備する予定であった産科病床と、ハイリスクの妊娠に対応するM-FICUを多摩広域基幹病院に移動、集中させることで、効率的な産科体制を構築するものだと評価しています。
 そこで、都内における産婦人科の医師数や施設数は今どのようになっているか、お伺いいたします。

◯及川経営企画部長 

 東京都福祉保健局が発表しております、医師・歯科医師・薬剤師調査によりますと、都内の産婦人科及び産科の医師数は、平成十二年千五百二十八人、平成十六年千四百二十四人となっておりまして、平成十六年のデータではありますけれども、四年前に比べ百四人の減となっております。
 また、東京都の医療施設によりますと、都内の産婦人科及び産科を標榜する病院は、平成十二年百三十七施設、平成十六年百三十三施設でありまして、四年前に比べ四施設の減となっております。
 同様に、診療所では、平成十二年六百三十八施設、平成十六年五百九十二施設でございまして、四十六施設の減となっております。

早坂委員 

 都内においても産科医師は減少しており、産科医師不足の問題は今後も引き続くものと予想されます。多摩地域の周産期医療の充実のためには、必要な医療スタッフの確保が喫緊の課題となっています。
 そこで、都立病院として不足する産科医師の確保、養成にどのように取り組んでいくか、お伺いいたします。

◯及川経営企画部長 

 都立病院では、専門医の育成を目的としましたシニアレジデント制度を行っておりまして、平成十六年度から産婦人科医師の受け入れを開始しております。
 今後も、教育カリキュラムの充実や処遇の改善などを含めまして、より体系的かつ総合的に臨床研修医制度を整備しまして、また拡充もしていく中で、産科医師の確保、育成に努めてまいります。

早坂委員 

 多摩広域基幹病院及び小児総合医療センターの整備は、多摩地域における医療拠点を整備し、医療水準の向上を図るという一大事業であり、都民も大いに期待しています。万全の準備を行うとともに、一日も早い病院開設を要望します。
 以上です。