2006.11.02 : 平成18年文教委員会 本文
「公衆浴場」

早坂委員 

 公衆浴場対策についてお伺いいたします。
 都民の健康志向の高まりや折からの温浴ブームなどから、都内の各地にスーパー銭湯が数多く開業し、手軽なレジャー施設として多くの家族客の利用でにぎわっています。一方、都民の日常生活に欠くことのできない施設として安価な料金で利用でき、地域住民の身近な温浴施設としての公衆浴場も頑張って営業を続けています。
 都内の公衆浴場は、浴場利用者の減少や施設の老朽化などにより、最盛期の昭和四十三年には二千六百八十七軒もあったのが、現在では千軒を割り九百七十九軒にまで減少しています。
 私の地元、杉並区でも現在四十一軒、年々減少していますが、公衆浴場を高齢者の交流の場として開放したり、健康体操の講座を開いたりして地域の皆さんに大変喜ばれています。公衆浴場が地域コミュニティの核として果たすべき役割は大きいと思います。
 公衆浴場に対する行政施策は、例えば我が杉並区では、風呂っと杉並とか、まちの湯健康事業というような施策を通じて支援しているように、基本的には基礎的自治体である区市において実施されています。一方、東京都においては、広域的な立場で公衆浴場の施設を確保するという観点から、施設整備に係る各種補助施策を用意しています。
 さきの委員会でお配りいただいた平成十八年版の生活文化局事業概要を見ると、その中に公衆浴場対策についての記載があります。その中に、健康増進型公衆浴場改築支援事業とあり、区市と連携しつつ、地域貢献度が高い浴場として施設更新する浴場に対し改築及び改修費を補助するという説明がついています。その括弧書きの中に、十七年度から事業を再構築したとありますが、この再構築の経緯と考え方について伺います。

◯宮川消費生活部長 

 ただいまの早坂委員のお話にもございましたように、私どもも、地域の身近な温浴施設である公衆浴場にはまだまだ都民に喜ばれ役立つ施設となる十分な可能性があるものと認識をしております。
 これまでも魅力のある快適な温浴サービスの提供施設として多くの都民に利用されるよう施策を講じてまいりました。平成十六年度までは多機能型公衆浴場改築支援事業を実施いたしまして、公衆浴場にもジェットバスや露天風呂といった多機能の入浴設備を備えて、利用者が高い料金を払わなくても快適な気分を味わえるよう、主として設備面の充実に向けて支援をしてまいりました。
 しかしながら、一般にスーパー銭湯のような大きな経営資源を持たない公衆浴場の経営努力にも限界がございますので、関係者とさらなる検討を深めまして、公衆浴場が地域の核となり、地域の人々に一層支えられる施設となるように、支援メニューを見直すことといたしました。
 その結果、区市との連携を図りつつ、ミニデイサービスや健康増進事業、例えば健康チェックであるとか健康体操等、こういったものができるような施設として高齢社会への対応を図るほか、クリーンエネルギーへの転換も進めるなど、地域貢献度の高い施設として整備できるように、平成十七年度に健康増進型公衆浴場改築支援事業として再構築し、補助額も増額をして現在に至っているところでございます。

早坂委員 

 公衆浴場を、単に入浴する人にとって快適な場とするだけでなく、地域の人々に期待され、地域によって積極的に支えられる施設にしていくという視点は大変重要であります。
 これまでの公衆浴場を、公衆衛生の確保という観点から大きく進んで、ミニデイサービスや健康増進事業が実施できる場としての活用を図るなど、住民の健康増進や介護予防という福祉の観点から、地域貢献度の高い浴場として再生しようというものであり、適切な事業転換であると考えます。
 また、これまで使用されてきたまきや重油などの化石燃料からガスや電気などクリーンエネルギーへの使用燃料の転換についても補助メニューに入っています。環境に配慮していくことは重要なことであると考えます。
 しかし、この事業概要の中にある平成十七年度の事業実績は、すべてゼロになっています。これはどういうことなのかということについてお伺いいたします。

◯宮川消費生活部長 

 施設の改築に踏み切るということは、多くの公衆浴場の経営者にとりまして一生に一度の大事業でございます。そのような関係もございまして、平成十七年度の事業の再構築に当たります際にも、業界や関係区市に対しまして事前に周知に務めたところでございます。
 しかしながら、多額の設備投資のための資金調達や後継者の確保、またしっかりとした経営計画づくりという点では、事業が初年度ということもございまして、参考となるような事例もない中で、経営者の方々も慎重になりまして、改築に着手するというまでには至らなかったというところでございます。

早坂委員 

 せっかくよい制度をつくっても、利用実績がないというのでは意味がありません。引き続き業界や区市とも十分連携をとって、適切な事業執行を図るべきだと考えます。
 今年度の見通しについて伺います。

◯宮川消費生活部長 

 今年度は、公衆浴場経営者や関係区市との連絡調整に早くから取り組みまして、七月には区市の担当者との意見交換会を開くなどいたしまして、業界側の方に芽生え始めましたこの事業に対します関心の目を、関係区と連携して大きく育てる努力を続けてまいりました。その結果、杉並区と品川区におきまして、それぞれ一軒ずつ、合計二軒の公衆浴場において改築が進んできておりまして、来年三月には竣工できる見通しとなっております。
 また、改築には至らないまでも、大規模改修工事で対応したいという業者も一軒手を挙げてございまして、関係区との間で現在調整を進めているところでございます。

早坂委員 

 先日の新聞報道では、夕方になると皇居の外周などをジョギングする会社員やOLが、着がえや入浴で立ち寄って浴場がごった返しており、経営者も、いっときは廃業を考えたが、今では洗い場の拡張を検討しているというような内容の記事がありました。
 また、足立区では、五人以上のスポーツ団体が一人百円引きの割引料金で入浴できる制度を始めました。都民の健康志向が公衆浴場の新たな利用客をふやすことにつながっています。
 私自身も、二人の子どもを連れ、月に何度か銭湯に通っていますが、いつも子どもは大喜びで、また連れていってとせがまれます。このように、地域生活や家庭対話に欠かせない都内の公衆浴場が、今後とも安定した経営のもとで都民に貢献できるよう、東京都としても引き続き努力することをお願いいたします。