2005.10.18 : 平成17年厚生委員会 本文
「ホームレス対策」

早坂委員 

 ホームレス対策についてお伺いいたします。
まず、東京都内におけるホームレス数の推移について教えてください。

◯狩野連絡調整担当部長 

 東京都は、都内における路上生活者の概数調査を八月と二月の年二回実施しております。直近の平成十七年八月の調査結果では、二十三区内の路上生活者数は四千二百六十三人であり、前年同月比較で千二百三十四人の減少となっております。

早坂委員

 七年ぶりに五千人を下回ったということでありますが、近年、ホームレスが五千人前後で推移していた背景には、不況とそれに伴う失業率の悪化など経済情勢によるもの、廃品回収など都市雑業の存在などによる周辺からの流入など、大都市特有の社会情勢があると思います。こうした状況を踏まえ、東京都としてホームレス対策を実施していると考えますが、具体的な実施策と、その成果についてお伺いいたします。

◯狩野連絡調整担当部長 

 ホームレス対策の基本は、自立した生活を回復させ、地域社会の一員として社会に復帰させることにあります。そこで、東京都は、平成十三年八月に特別区と路上生活者対策事業にかかわる都区協定書を締結し、特別区の各ブロックに、ホームレスの心身の健康回復などを図る緊急一時保護センターと、就労支援を行う自立支援センターをそれぞれ一カ所ずつ設置することとし、自立支援システムをスタートさせました。現在、特別区内の五ブロックには計十カ所の施設を設置してございます。
 実績といたしましては、緊急一時保護センターにつきましては、平成十七年八月末現在で、これまで約一万一千人が入所し、そのうち約半数が自立支援センターに進んでおります。同様に、自立支援センターにつきましては、これまで五千三百九十四人が退所し、そのうち約半数の二千七百五十人が就労によって自立しております。
 また、平成十六年度から、都内のホームレスが多い五公園を対象に、ホームレス地域生活移行支援事業を実施しております。本事業は、これまでの自立支援システムでは対応が難しい、公園で生活をしているホームレスに対して、借り上げた住居を提供し、あわせて就労や生活に関する支援を行うことにより、地域における自立生活への移行を目指すものであります。
 実績といたしまして、平成十七年八月末現在で、既に七百三十人余りの元ホームレスの方が公園から借り上げ住居に入居しております。

早坂委員

 ホームレスの数が減少していることからも、これらの事業は着実に成果を上げていると思います。事業の対象になった五つの公園においては、公園本来の機能も回復しつつあります。ただ、なぜ別の事業を展開する必要があるのか、二つの事業の違いとそれぞれの予算についてお伺いいたします。

◯狩野連絡調整担当部長 

 先ほど申し上げましたように、平成十三年度から、東京都は、特別区と共同して独自の自立支援システムを立ち上げるなどして路上生活者対策を実施して、一定の効果を上げてきたところでございます。これまでのこうした自立支援システムでは対応が難しいホームレスが存在することもわかってまいりました。その多くは、廃品回収等の都市雑業により一定の収入は得ているものの、アパートなどの家賃の支払いが困難であるため、公園で定着的に生活している人たちであります。平成十六年度から実施しております地域生活移行支援事業は、公園で生活しているこれらホームレスに対して、借り上げた住居を提供し、あわせて就労支援や生活相談などを行うことにより、地域での自立した生活へ移行できるよう支援する事業であり、これまでの自立支援システムを新たに補完、拡充することで、ホームレス問題の抜本的解決を図ろうとするものでございます。
 予算額でございますが、自立支援システムにつきましては、平成十七年度予算は十三億二千九百六十万、地域生活移行支援事業につきましては九億八千八百万となっております。

早坂委員

 今のお話では、路上生活に入ったばかりの方については自立支援事業によって社会復帰をまず促進して、もう一方、一定期間以上の路上生活を送って、ある意味では公園などに生活基盤を置いている人については地域生活移行支援事業で対応していくという二つの区別がよくわかりました。ターゲットに応じて事業を構築するなど、なかなか努力をされているんだなというふうに思いました。
 しかし、五千人のホームレスを対象に、合計二十三億円の事業費をかけているということは、一人当たり実に四十六万円かけているということになります。今後も永続的にこれだけの予算を投入していくことについては、広く都民の理解が得られるかどうかは、私は疑問に思います。
 そもそもホームレス問題は、大都市を中心とする広域的な課題であり、その解決には、雇用や所得保障など社会全体での取り組みが不可欠であります。食べる食でなく、働く職を与えることこそがホームレス対策の本質であると私は考えています。
 今後も、ホームレス対策に当たっては費用対効果を勘案し、地域を重点化するなど、めり張りのついた施策展開を行うべきだと思いますが、ご見解を伺います。

◯狩野連絡調整担当部長 

 先ほどご説明いたしました、平成十六年度から実施しております地域生活移行支援事業のこれまでの効果検証をしたところでは、この事業を利用した者の平均年齢は五十歳代半ばとなっており、そのほとんどがいわゆる生活保護の予備軍というふうにいえる生活状況でございます。この事業は、そうした層のホームレスの自立心を引き出すということで、生活保護受給を最小限に食いとめており、一定の成果があったというふうに考えております。
 現在、平成十七年八月の調査によれば、東京都内二十三区内には、五公園以外にも、ブルーテントを張り定着的に生活をしている地域がまだまだ多く確認をされております。これらの地域では、公園等の公共空間の自由な利用が妨げられていることにより、地域住民とのあつれきが生じたり、多くの苦情が都にも寄せられている状況でございます。
 こうした状況を踏まえまして、先生ご指摘のように、ホームレス対策の基本は就労による自立を図るということであって、すべて税によって自立を図っていくということではなくて、本人の自助努力によって自立できるように、効果的、効率的な施策展開を行っていくべきであるというふうに考えております。